2020/05/29【新型コロナウイルス:COVID-19】感染1日2万人、ブラジル世界最多 低所得層に連鎖 /ブラジル
中南米で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。ブラジルの1日あたりの新規感染者は2万人を超え、米国を抜いて世界最多となった。1日で日本の累計感染者数(約1万7000人)を上回るペースだ。ペルーやチリなども過去最多を更新。低所得者層が多く住む地域から連鎖的に感染が広がっており、死者の増加や問題の長期化が懸念される。
米ジョンズホプキンス大の集計(日本時間29日午前5時時点)によると、ブラジルの27日の新規感染者数は2万人を超え、1万8000人の米国を上回った。累計の感染者数では依然として約171万人の米国が最多だが、ブラジルは41万人で続く。世界全体では576万人で、中南米地域が増加をけん引する。
米国では外出制限などの政策が奏功し、新規感染者数は4月下旬に記録したピーク時から半減している。一方、ブラジルは上昇傾向が続いており、収束の兆しは見えない。検査態勢が十分でなく、実際の感染者数は10倍以上にのぼるとの推計もある。米ワシントン大学は8月上旬までに、ブラジルの累計死者数が12万5千人と、現在の5倍弱に膨れあがると予測する。
ブラジルでの感染拡大の温床となっているのが、低所得者が多い、大都市のファベーラ(貧民街)や郊外、地方都市だ。衛生環境が悪い場所に密集して住んでいる人が多い上、生活のために外出せざるを得ず、感染が連鎖している。マスクなどの医療器具が不足していることから、医療従事者の感染拡大も深刻だ。
中南米ではペルーやチリ、メキシコといった国でも新規感染者が過去最多を更新している。感染を抑えられているのはコスタリカやパラグアイ、ウルグアイといった小国が中心で、国土が広く、格差が大きい国ほど抑制に失敗している傾向にある。
収束の兆しが見えない一方、経済の低迷も深刻で、ブラジルやペルー、メキシコなどは、経済活動の再開に向けて動いている。今後、さらに感染者数が拡大する見通しだ。
今後、日本への影響が出る可能性もある。日本国内で流通する鶏肉の2~3割が輸入品で、うち7割がブラジル産だ。鉄鉱石など資源分野でもブラジルの存在感は大きい。既に食肉加工最大手のJBSなどの食肉加工工場の一部が新型コロナを理由に操業を止めており、感染拡大が続けば今後、輸出に響きそうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59725900Z20C20A5000000/