2020/06/05【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナで業務急増なのに 小中学校教員 全国で約500人不足

今月から各地で学校が再開されましたが、教員不足が深刻な状況です。
全国の小中学校の教員数は、定数に対して少なくともおよそ500人が不足していることがわかりました。
学校現場では新型コロナウイルスの感染防止で業務が急増していて、専門家は「外部人材の活用をさらに進めるなど早急な対策が必要だ」と指摘しています。
今月から全国各地で小中学校が再開されたことを受けて、NHKでは教員不足の実態を取材しました。
都道府県と政令指定都市、合わせて67の教育委員会に教員の配置状況を尋ねたところ、今月初めまでに31の教育委員会で、定数に対して、少なくともおよそ500人の教員が不足し、配置できない状況であることがわかりました。
最も多かったのは、
▽愛知県でおよそ63人、
次いで
▽宮城県の60人、
▽埼玉県の51人、
▽茨城県の42人、
▽福島県と鹿児島県が28人、
▽大分県が26人、などとなっています。
こうした地域では教員不足のため、少人数学級を断念するなどの影響が出ているということです。
さらに深刻なのは新型コロナウイルスによる影響です。
学校現場では感染防止のため、校内の消毒作業や分散登校などで、人手はさらに必要になっていて、国も教員など合わせて8万5000人を臨時に学校に配置できるよう取り組むとしています。
ところが、多くの自治体では、募集しても人が集まらないなど、新たな教員の確保が困難な状況だということです。

非正規雇用の教員へのニーズ 全国で高まる

教員不足の背景には、臨時採用などの非正規雇用の教員へのニーズが高まっている一方、その採用が難しくなっている現状があります。
各自治体ごとに学校に配置される教員は、本来は正規の教員が望ましいとされていますが、専門家などによりますと、自治体によっては、財政的な理由から、非正規雇用の教員の採用を増やしていて、全国的にニーズが高まっているといるということです。
一方で、人材の供給源となる大学の教育学部などの学生は、民間企業に流れるケースも相次いでいて、特に非正規雇用の教員の人材確保が極めて難しくなっている状況が続いています。

長時間勤務の管理が課題に

今月1日から本格的に授業を再開した富山市の小中学校では、新型コロナウイルスの対策で教員の業務が急増していて、追加の教員の確保も難しい中、長時間勤務の管理が課題となっています。
このうち、今月1日から本格的に授業を再開した富山市の速星中学校は、必要な教員数を確保していますが、新型コロナウイルスの対策で教員の業務が急増しています。
今週は臨時休校が長引いたことで、悩みや不安を抱える生徒の心のケアにあたるため、担任が生徒1人1人と面談を行っています。
また、学校での感染リスクを少しでも抑えようと、子どもたちが同じ取っ手に触れないよう教室の入り口にあるドアを撤去したほか、放課後には教室の机や手すりを1つ1つ消毒しています。
さらに富山市の小中学校では、授業の遅れを取り戻すため、通常33日間の夏休みを10日間に短縮することを決め、運動会や修学旅行など重要な学校行事の見直しも迫られています。
去年、富山県教職員組合が行った教員の勤務実態調査では、中学校の教員の1か月の時間外労働の合計の平均は99時間余りに上り、過労死ラインとされる月80時間を大きく上回りました。
速星中学校の古野修康校長は「今後、教員の負担はますます増えていくことが予想されるので、校長として授業の方法や行事など、学校の仕事をもう一度精査し、先生の様子や労働時間をしっかりと注視していきたい」と話していました。

再雇用でなんとかしのぐ自治体も

教員不足が深刻化するな中、定年退職した人材を再雇用して、なんとか不足をしのいでいる自治体もあります。
大分県では非正規雇用の教員の募集をしてもなかなか集まらず、ことし4月時点で合わせて26人の教員が不足し、配置できていない状況になっています。
このうち、大分県別府市の境川小学校では、定年退職した60代の元教員3人を再任用し、なんとか必要な教員数を配置しています。
教員OBたちは豊富な経験があり、頼りになるといいますが、年齢を重ね、体力面で不安を抱える場面もあるといいます。
さらに今、学校が頭を悩ませているのが、新型コロナウイルスへの対応です。
本来は感染防止のため、クラスを分けて授業を行いたいと考えていましたが、対応できる教員が足りないため、よりスペースの広い音楽室や学習室に移動させる対応をとったということです。
一方、負担が懸念された校舎内の消毒作業については、市が新型コロナウイルスの影響で失業した人などを対象に臨時雇用した職員らが行うことになり、教員たちの負担は軽減されたということです。
境川小学校の勝河馨校長は「感染防止対策の対応もあり、業務量はふだんの1.5倍に感じている。いわば全員スタメンで出場し、控えがいないような“全員野球状態”が続いていて、人手が欲しいというのが本音だが、一丸となってやっていくしかない」と話していました。

専門家「教員の業務 さらに見直し進める必要」

教育行政や実態に詳しい慶應義塾大学の佐久間亜紀教授は「ふだんから教員不足の中、コロナによってさらに深刻さが増し、現場の教員は疲弊している状況だ。教員をすぐに増やすことは簡単にはできないが、人手確保のためには、元教員などが現場に戻りやすいような免許制度の弾力化や、教員の業務をさらに見直しを進めていく必要がある。今はコロナで仕事が難しくなっている人も地域に多いと思うので、そうした人材を雇用することも一つの方法ではないか」と話します。
そのうえで、「例えばOECD諸国の学校では20人学級が平均だが、日本も同様に少人数学級を充実させて、正規雇用の教員を増やす計画に切り替えるなど、教員養成の政策を根本から見直すことが重要ではないか」と指摘しています。
https://www3.nhk.or.jp/…/20200605/k10012459621000.html

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