新型コロナウイルスに感染した人と接触した可能性がある場合に通知を受けられるスマートフォン向けのアプリについて、西村経済再生担当大臣は、一般の人がダウンロードして利用できるよう、19日からインターネット上に公開すると明らかにしました。
このアプリは、スマートフォンを持っている人どうしが一定の距離に近づくと、相手のデータを互いに記録し、仮に利用者が新型コロナウイルスに感染した場合には、記録された相手先に濃厚接触の疑いがあるとして通知する仕組みです。
これについて、西村経済再生担当大臣は記者会見で、一般の人がダウンロードして利用できるよう、19日からアプリをインターネット上に公開すると明らかにしました。
そのうえで、西村大臣は、電話番号や位置情報など、個人の特定につながる情報は記録されない仕組みになっているとして、「個人情報に配慮しながら、いち早く接触した可能性の通知を受けられるメリットがある。大切な命を守るためにも、ぜひインストールしてもらいたい」と呼びかけました。
自治体の対応と課題
新型コロナウイルスに感染した人と接触した可能性がある場合にスマートフォンに通知する取り組みは、今回のアプリとは別の仕組みで、大阪府など各地の自治体でも導入が始まっています。
各自治体が取り入れている仕組みでは、店舗や施設の入り口などに掲示されたQRコードを利用者がスマホで読み込むことで場所や日時などの情報が記録され、その場所を訪れた人の中から感染者が出た場合に、感染者と接触した可能性をメールやLINEで通知します。
これまでに東京都や大阪府、神奈川県など複数の自治体が導入していて、登録する情報を名前や電話番号ではなくメールアドレスに限ったり、感染者が出た場合の通知について店名を伏せて行ったりと、自治体ごとにプライバシーにも配慮しています。
今回のアプリや、すでに始まっている自治体の取り組みは任意で利用する仕組みですが、効果を発揮するには全体の6割の人が利用する必要があるとも指摘され、どれだけ多くの人が利用するかがカギになります。
このため、今後は取り組みへの理解を広めていくことや、プライバシーが守られているかを検証する仕組みを導入するなど透明性を高めることが求められます。
海外では
接触確認アプリは、より多くの人がダウンロードして使うことで効果を発揮します。
イギリスのオックスフォード大学の研究者は、住民100万人の町を想定してシミュレーションを行った結果、ほかの感染対策と合わせて接触確認アプリを導入した場合、新型コロナウイルスの感染者や入院患者を大幅に減らすことができるという結果が得られたとしています。
そのうえで、人口の6割が接触確認アプリを使えば感染の拡大は止められ、6割に届かなかったとしても感染者の数の減少につながると推定しています。
また、プライバシーを重視した接触確認アプリの開発を行う、「Covid Watch」のリス・フェンウィックさんは「密接な環境を避けることや日常的な手洗い、マスクの着用など他の対策を並行して行えば20%のダウンロードで効果を生む」としています。
感染の第2波に備える中、国によってはアプリの使用を義務化する動きや議論が起きていて、中東のカタールは先月22日からダウンロードの義務化に踏み切ったほか、インドではアプリをダウンロードしていないと一部の公共施設や商業施設に入ることができなくなっています。
これに対して、アプリの利用を強制せず自発的なダウンロードに頼る国々は、セキュリティーやブライバシー保護の対策を強化することで利用者に理解を求めています。
このうち、新型コロナウイルスによる死者が3万4000人を超えているイタリアでは、今月からアプリの運用が始まりました。
イタリアのデータ分析会社が事前に行った調査では「アプリをダウンロードする」と回答した人が44%に上りましたが、実際の利用者は、公開後1週間で270万人と人口の4.5%にとどまっています。
イタリア政府は今後、アプリの認知度を高めるため、広告を通じた大規模なキャンペーンを行うとしています。