新型コロナウイルスの感染拡大を受け必要性が議論されてきた「病院船」について、政府は医療従事者の確保などに課題があるとして、当面は新たな建造を見送る考えを示しました。
新型コロナウイルスの感染が拡大した去年、与野党の国会議員などから、大規模な災害や感染症が発生した場合に備えて、船に病院の機能を持たせた「病院船」の導入を求める声が上がりました。
このため政府は、病院船の必要性について検討してきましたが、30日、当面は新たな建造を見送るとする考えを公表しました。
それによりますと「病院船」は、大規模な災害で陸路が寸断された地域や離島の医療のサポートが期待できるものの、感染症への対応としては陸上の医療機関より優れている点はないとしています。
また、大規模な災害時であっても、被災地への到着には時間がかかり、早急に治療が必要な重症患者への対応は難しいとしています。
さらに過去の災害の実績から、医療従事者を陸上の医療機関に加えて病院船に派遣することは困難で、最大の課題になるとしています。
船を運航する要員の確保や、収益を確保するための平常時の活用方法も見いだせず、今後は既存の船を活用した災害時の医療体制の強化に取り組みたいとしています。
このため政府は、来年度、高知県の沖合で自衛隊の船を使って船上での治療の一連の流れを確認する訓練を行うことにしています。