2021/05/10【新型コロナウイルス:COVID-19】感染不安、住民の怒号が「職員の限界」招く壮絶 コロナ長期化が病院と役所にもたらす危機
新型コロナウイルスの感染拡大から1年以上が経過し、医療従事者や自治体職員らの疲弊が深刻化している。彼らを襲うのは、過重労働に伴う身体的疲労に加え、うつ症状や不眠などメンタル面での不調だ。
何が彼らの精神を追い詰めているのか。会員サイト『東洋経済プラス』の短期連載「コロナ メンタル危機」では、患者や住民を”支える立場”にある人たちの壮絶な労働環境の実態と、医療現場などでのメンタル支援が遅れる構造的課題に迫った。
残業100時間超、極限に追い込まれる保健師
「『あの人への連絡を忘れてしまった』。現実との境目がわからないような、仕事の夢を見るようになった」。大阪府内の保健所で働くベテラン保健師のAさんは、こう打ち明ける。
Aさんが勤める保健所に保健師は15人しかいないが、毎日100人以上のコロナ患者への対応に追われる。数人の職員が終電過ぎまで作業しても、次の日に仕事が積み残される日が続く。
仕事とプライベートを割り切れる性格だというAさんが、冒頭のような夢を見始めるようになったのは、2020年秋ぐらいだった。
うつに不眠、「心の異変」相次ぐ医療現場の深刻実態
2020年12月。長野県のある公立病院では近隣の2カ所の介護施設で新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)が発生し、多数の感染患者を受け入れた。それまで最低限の人員で回していたコロナ病棟には、新たにほかの病棟から看護師が投入された。
「準備期間がなく、ぶっつけ本番に近い状態でコロナ病棟に入った。感染防護具を着るのも初めてで、感染の恐怖は大きかった」。コロナ病棟に回された看護師は、そう振り返る。この病院では看護師5人が院内感染しているという。
クラスター施設職員「2~3割がうつ症状」の悲惨
福島県立医科大学・災害こころの医学講座の主任教授を務める前田正治氏は、クラスター(集団感染)が発生した医療・介護施設の職員のメンタルヘルス・ケアを行う。
前田教授は「医療従事者は、自分が感染すると社会的な制裁を受けるのではないかという不安が大きい」と強調する。
前田教授に、医療従事者らのメンタル危機を防ぐための支援のあり方などについて話を聞いた。
https://toyokeizai.net/articles/-/427171