2021/05/20【新型コロナウイルス:COVID-19】思わずツッコミたい新型コロナ対策 手袋の上から手指消毒
スーパーなどでは、手袋を付けっぱなしにして、手袋の上から消毒することが、未だ当たり前の如く実施されています。同じ手袋で次から次へと商品に触れていくと、その過程のどこかで、手袋に病原体が付着した場合に、次に触れる商品が汚染するので、手袋の上から消毒薬が塗布されているものと思われます。
過去には病院内で、手袋をしたまま手洗いをしたり、その上からアルコール手指消毒を塗布するという感染対策が実施されたことがあります。手袋の上からの手洗いや手指消毒が有効だと思われていたからです。しかし、2007年に米国疾病管理予防センター(CDC)が公開したガイドライン(1)に「手袋を再利用するために洗ってはならない。これは病原体の伝播に関連するからである(2-6)」と複数の根拠を伴って明記され、そのような対応はされなくなりました。院内感染対策では、手袋は患者の血液や体液や汚染物に触れるときのみに着用し、使用後はすぐに廃棄します。手袋は長時間、着用し続けるものではありません。長時間の使用によって、手袋に小さな穴が開くことがあり、そこから病原体は手袋の中に入り込んでしまうからです。
外科手術のときでも、数時間の手術の間に、何度も手袋を新しく交換することがあります。それは手袋に穴が開いて、術者の手指に付着している病原体が手袋の穴から外部に流れ出て、患者が感染してしまうのを恐れているからです。
同じ手袋で一日中作業をして、ときどき手袋の上からアルコールを塗布することは、少なくとも感染予防としての効果は期待できません。素手の上からのアルコール塗布であれば、塗り残しの部分を気付くことができますが、手袋の上からでは塗り残しがあっても気付かないことでしょう。ベストな方法は素手で商品を取り扱い、適宜アルコールを塗布するというものです。
一方、客に問題があることがあります。店員が素手で商品に触れると手指の病原体が商品に付着するのではないかと思い、店員への手袋着用を求めることがあります。そのようなことが、手袋の上からアルコールの塗布をするという、形式的な感染対策を助長している可能性も否定できません。
コロナ対策は適切に実施しなければなりません。「アルコールを不十分に塗布した手袋」「穴が開いているかもしれない不完全な手袋」で商品を取り扱うのではなく、「適切に手指消毒した素手」で取り扱って欲しいものです。
(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野 邦夫)