2021/06/02【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナ重症患者増で全身麻酔薬不足 適正使用求める 厚労省

新型コロナウイルスで人工呼吸器を必要とする重症患者が多い状態が続き、医療現場で全身麻酔に使われる薬の供給が不足しています。厚生労働省は、医療機関に対して適正な使用に努めてほしいと呼びかけていて、今後、さらに不足した場合は、緊急性の高い手術以外は延期するなどして使用を控えるよう呼びかける対応も検討するとしています。
新型コロナウイルスで重症患者が増加するのに伴って、全身麻酔を行う際に点滴で血液中に投与する鎮静剤「プロポフォール」の需要が大幅に増え、品薄の状態が続いています。
厚生労働省によりますとプロポフォールは、ことし4月中旬から重症患者が急激に増え、医療体制が破綻の危機に直面していた大阪などを中心に需要が急激に増え、全国的に平常時の1.5倍から2倍になっているということです。
このため厚生労働省は5月14日付けで医療機関に対して、必要な量のみ購入し適正に使用するよう求めるとともに、医療上問題がなければ、吸入する別のタイプの麻酔薬の使用を考慮するよう求める文書を出しました。
さらに、輸入量を増やせないかメーカーを通じて働きかけているほか、今後、さらに深刻な不足が予想される場合は、緊急性の高い手術以外は延期するなどして使用を控えるよう呼びかける対応も検討するとしています。
厚生労働省は「感染の拡大で海外でも需要は高まっており、不足がいつ解消するか見通せないのが現状だ。少しでも早く解消できるよう努めていきたい」と話しています。
一方、日本麻酔科学会も5月下旬からアンケート調査を実施していて、各地での供給状況を把握するとしています。
大阪大学医学部附属病院は
全身麻酔に使われる鎮静剤の不足は、新型コロナの重症患者を治療する医療現場に大きな影響を及ぼしていて大阪の大学病院では急きょ、他の種類の麻酔薬を組み合わせて使うなどの対応に迫られています。
大阪 吹田市にある大阪大学医学部附属病院は、現在、府内で最大規模となる重症患者用の病床23床を確保していて、これまでに158人の重症患者を受け入れています。
病院によりますと、全身麻酔に使う鎮静剤「プロポフォール」は、新型コロナの重症患者の治療では、人工呼吸器を装着している患者の痛みや苦痛を和らげるため、点滴で投与していて非常に多く使う必要があります。
病院では府内で重症患者が急増した4月下旬から5月にかけて消費量が大幅に増え、大型連休明けには、病院内の在庫が一時的にほとんどない状況になり、現在も必要とする量の3分の1程度しか供給がない状態が続いているといいます。
大阪大学医学部附属病院薬剤部の山本智也副薬剤部長は「需要が高まって、買いたいという数に供給が全く追いつかず、納期も遅れてきている。今は2週間先のめどしかたっていない状況でそれ以降は未定だ」と話しています。
供給不足を受けて病院では、重症患者の治療に他の種類の麻酔薬を組み合わせるなどの対応に迫られています。
大阪大学医学部附属病院集中治療部の内山昭則副部長は「重症患者の肺の状態がよくなるまで待つ間、患者の苦痛が大きい場合は深く眠ってもらう必要がある。その際に1番使うのがプロポフォールなので、最も大事な薬が足りずに焦っている。薬には特性があるので本当はこっちを使いたかったのに、それができないというので、患者の経過に影響する可能性がある」と話しています。
さらに、プロポフォールは人工呼吸器が必要な他の病気の患者や、全身麻酔が必要な手術の際に幅広く使われるため、病院では新型コロナの重症患者が増え続けると、一般の医療にも影響が出かねないと懸念しています。
内山副部長は「もう1度、同じ波が来ると今度は本当に薬が足りなくなる。コロナだけではなくかなり広く使われているので、影響が大きいと思う」と話しています。
製薬会社 在庫がひっ迫し欠品回避できず
「プロポフォール」の輸入販売で国内の半数以上のシェアがある大阪市の丸石製薬は、5月14日、在庫がひっ迫し、欠品が回避できないとして医療関係者に向けた通知を出しています。
この中では、世界的な新型コロナの患者の急増に伴って、需要が高まり在庫がひっ迫しているほか、輸入元からの入荷も遅れ医療機関からの注文に対して、十分に供給できず欠品になることが避けられないと説明しています。
丸石製薬は「重症患者数の動向が予測しづらいために見通しが立たない。医療機関や患者にご迷惑をおかけしているので、安定供給確保のため、輸入元に対し、大幅な増産と早期入荷について常時、折衝しております」とコメントしています。
医薬品卸売会社「全世界的に不足」
大阪に本社がある大手の医薬品卸売会社は取引先と相談しながら、重症患者を受け入れている病院に優先的に鎮静剤を販売するなど、対応に追われています。
大阪 中央区に本社がある医薬品卸売会社「ケーエスケー」によりますと、全身麻酔に使われる鎮静剤「プロポフォール」は、世界的な新型コロナの感染拡大に伴う需要の高まりで、生産量が追いつかなくなり、さらに国内でも“第4波”で重症患者が急増して取引先の医療機関への安定した供給が難しくなっているということです。
会社によりますと、ことし4月と先月は大阪府内でのプロポフォールの需要は、前の年の同じ時期と比べて4倍から5倍に増えたといういうことです。
会社の倉庫にはふだんは府内の医療機関に卸す量の10日分を在庫として備蓄していますが、現在はその半分ほどに減っているということで、会社では歯科や内視鏡センターなどでは、ほかの鎮静剤を使うようにして納入量を減らしてもらうなどしながら、新型コロナの重症患者を受け入れている府内の病院に、プロポフォールを優先的に販売するなどの工夫を行っています。
「ケーエスケー」の平谷洋物流管理部長は「恐ろしいのはゴールが見えていないというところで、来月、再来月、商品が順当に流通できるのかも不透明な状況だ。今回のような全世界的に不足するケースは過去に経験したことがない。安全・安心に商品を届けるのが医薬品卸の使命だが、現状を鑑みると、『供給できます』という返事はしにくい」と話しています。
https://www3.nhk.or.jp/…/20210602/k10013064701000.html

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