主に子どもが感染し重症化するおそれもある、RSウイルス感染症の患者が、ことしは急増しています。
新型コロナウイルスの対策にともなって、去年、感染が広がらなかった結果、多くの子どもが免疫を持っていないことが影響しているとみられています。
RSウイルス感染症は、主に幼い子どもが感染し、発熱やせきなど、かぜに似た症状の出る病気で、特に6か月以下の赤ちゃんや心疾患のある赤ちゃんなどが感染すると重症化するおそれがあります。
国立感染症研究所によりますと、全国およそ3000の小児科の医療機関で、先月30日までの1週間に、RSウイルス感染症と診断された患者は、7818人報告されています。
現在と同じ方法で調査するようになった3年前以降の同じ期間の患者数で見ると、3年前が949人、おととしが1028人、去年が13人でした。
ことしの患者数は、3年前やおととしに比べるとおよそ8倍、去年との比較ではおよそ600倍に当たります。
RSウイルスは、2歳までにほとんどの子どもが感染するとされ、ここ数年、夏以降に感染が広がっていましたが、去年は、年間を通して流行しませんでした。
新型コロナウイルス対策でマスクをする人が多くなったことや、保育園が休園したことなどが影響しているとみられています。
専門家は、通常であれば免疫を獲得していた年齢の子どもたちの多くが免疫を持っていないため、ことしは感染が急拡大しているのではないかとみています。
公衆衛生学が専門で、新潟大学大学院の菖蒲川由郷特任教授は「新型コロナの影響によって、予期せぬ時期にRSウイルスの感染が広がっていて、小児科や新生児医療の現場では、急な対応を迫られている。コロナで医療体制がひっ迫している中で、RSウイルス感染症の重症患者が増えた場合の対応も懸念される」と指摘しています。
そのうえで、重症化する前の早めの受診を呼びかけていて、「お子さんが息苦しそうにしていたり、食欲がないようなときには、早めに医療機関に相談してほしい」と話しています。
都内の小児科・病児保育室では
小児科のクリニックや病児保育室には、多くの患者が訪れています。
このうち東京 港区の小児科「クリニックばんびぃに」には、発熱やせきの症状を訴える患者が増え、先月後半以降、1週間におよそ30人がRSウイルス感染症と診断されているということです。
4人の子どもがいて、このうち6歳の次男と0歳の長女がRSウイルス感染症と診断された30代の母親は「せきと鼻水で夜、寝苦しそうな状態が続いています。きょうだいが多いので、ほかの子どもにうつらないように対策が大変ですが、早く元気になってほしいです」と話していました。
また、このクリニックに併設された病児保育室にも毎日、定員の半分以上を占める3人から5人の患者が預けられています。
1歳の男の子を預けに来た30代の母親は「保育園ではやっているので、やっぱりという感じです。3、4日ぐらい前から熱が出始めて、せきも激しくなってきました。初めてかかったので心配です」と話していました。
「クリニックばんびぃに」の時田章史院長は「明らかに季節外れの流行で、この1、2週間は、かなり患者さんが多い状況が続いています。例年、それぞれの感染症が適度に流行して治療するというのが普通ですが、今回のように、一度に小さなお子さんが数多く感染し、重症や入院の患者が増加すると、小児科の医療がひっ迫するおそれがあり、その点をいちばん心配しています。気になる症状があった時には、早めに受診してほしい」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/…/20210613/k10013082611000.html