2021/06/18【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナの新たな後遺症に「ED」が浮上 世界で報告相次ぐ

新型コロナウイルス感染症の後遺症といえば、「倦怠感」「頭痛」「息切れ」「体の痛み」「味覚・嗅覚障害」「脱毛」などが有名だ。
そのメカニズムは完全には解明されてはいないが、一因に血管の障害や血栓形成が関係しているといわれる。体内の血管が傷つくので、循環不全や血栓による血流の悪化で多様な症状が出るというのだ。そんな新型コロナの後遺症として最近「男性の勃起障害(ED)」が注目されているという。
トルコの泌尿器科所属の医師グループが、新型コロナ流行前に比べ、パンデミック期にED患者が増加したことを「Sex Med」に報告した。
研究にはトルコ全土の泌尿器専門外来クリニック12施設が参加。2020年2月1日からトルコで最初の新型コロナ患者が見つかった同年3月11日までを「流行前期」、3月12日から同年6月1日までを「パンデミック期」と定義。18歳以上の男性疾患患者を比較検討した。男性疾患は「生殖機能障害」(精索静脈瘤、不妊症、性腺機能低下症、無射精症、精液瘤、停留精巣)と「性機能障害」(ED、早漏、ペロニー病、持続勃起症)に分けて評価した。
対象となったのは4955例。「流行前期」が3231例、「パンデミック期」が1724例だった。4955例のうち男性疾患患者は721例。受診者全体に占める割合は、「流行前期」の428例(13・2%)に比べ、「パンデミック期」では293例(17・0%)と有意に多かった。
生殖機能障害で見るとそれぞれ4・6%、6・2%、性機能障害では8・6%、10・8%とパンデミック期に有意な増加が見られた。EDについても6・6%から8・7%に増えたという。
報告では、その要因として心因性因子の影響を指摘。限られた空間でパートナーと四六時中過ごす中、関係性が悪化。その結果、もともと勃起に問題を抱えていた男性がパートナーに対し気まずさを感じたことが、受診を後押しした可能性も考えられるという。
ただし、EDの原因を単なるメンタル的要因だけに決めつけるのは無理がある。中国の研究者は、新型コロナに感染した男性はテストステロン(男性ホルモン)値が低いことを発見。性欲を制御するホルモン値の低下は、性的不能につながり得るとも結論付けている。

■症状が消えてもウイルスは長期間生存の可能性

さらに最近、興味深い報告が米国のマイアミ大学ミラー医学部の研究グループからもたらされた。
かなり前に新型コロナに感染した2人の患者で、陰茎手術をする際に採取した陰茎組織を調べたところ、いずれからも陰茎血管内皮から新型コロナウイルスが発見され、PCR検査でも陽性が確認されたという。さらにこの2人は血管壁を拡張させる一酸化窒素合成酵素が減り、陰茎動脈拡張能が落ちていることも証明された。
これは、症状が消えても新型コロナの感染が持続している可能性を示唆するとともに、陰茎の血流を増大させることで勃起するシステムを阻害する可能性を意味する。
東邦大学医学部名誉教授で、心臓や血管が専門の東丸貴信医師が言う。
「新型コロナウイルス感染症がEDを引き起こす可能性は十分あります。というのも、新型コロナ感染症の本態が血管内皮障害であることが分かっているからです。血管内皮には新型コロナウイルスの細胞への侵入口であるACE2受容体が多く発現しており、感染しやすい状態にあります。しかも血管内皮細胞は、血管を拡張させる一酸化窒素やこれを縮めるエンドセリンなど数多くの血管に働きかける物質を分泌していて、血管壁の伸び縮みから、血管壁への炎症細胞の接着、血管の透過性の調節などを行っています。そこにウイルスが感染すれば、ウイルスの侵入増殖や活性酸素分泌などで内皮細胞を傷つけ、炎症と免疫反応が生じる。それが毛細血管や大血管を通じて全身の臓器に広がることで、末梢循環不全や血栓症が生じるのです。よく、糖尿病の人はEDになりやすいと言われますが、それは高血糖により血管内皮障害が起きて陰茎動脈の拡張不全が生じるからです。それと同様に、新型コロナ感染症では、内皮障害などによる陰茎動脈の拡張不全や血栓症により、EDが生じる可能性があると考えられます」
また、EDは心臓病の初期の状態であることから、“新型コロナED”は潜在的な心臓病リスクの表れとも言えるのではないか。
気になるのは新型コロナ感染症は精子にも影響を与えることだ。重症度が高いほど精子の状態が悪くなり、集中治療室(ICU)に入院した重症患者は全員無精子症になった、との研究報告もある。
新型コロナ感染症は思った以上にリスクの高い病気で、それは地球を破壊している人類のおごりへの警告かもしれない。
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