乳幼児に肺炎を起こす恐れがある「RSウイルス感染症」の患者が異例の早さで増加している。マスク着用や手洗いなどの新型コロナウイルス対策が進んだことで昨年、RSウイルスの流行が抑えられた反動とみられ、専門家は「免疫のない子供たちが今年、一気に感染する可能性がある」と警戒を呼びかけている。
「この時期にこれだけ感染者が増えるのは近年まれだ」。小児科専門の遠隔相談サービス「小児科オンライン」を運営し、東京都内の保育園で園医を務める橋本直也医師はこう話す。
RSウイルスは主に鼻水や発熱、せきの症状が出る呼吸器感染症。飛沫(ひまつ)や接触による感染で、2歳までにほぼ全ての乳幼児がかかり、何度も感染する子もいる。大人や2、3歳以上の子供は軽い風邪のような症状で済むことが多いが、生後6カ月未満や生まれつき心臓に病気のある子供などの場合、重症化しやすく、呼吸困難や肺炎に至ることがある。
国立感染症研究所の集計によると、定点医療機関当たりの6月28~7月4日の感染者数は4・13人で、昨年同時期(0・01人)の約413倍に上る。地域別では三重県(16人)、福井県(12・3人)、和歌山県(10・37人)などが多かった。
平成30年と令和元年は夏ごろから感染が拡大。昨年は年間を通して低調だったが、今年は春ごろから感染者が増え始めている。
新潟大の菖蒲川由郷(しょうぶがわ・ゆうごう)特任教授(公衆衛生学)は「昨年は新型コロナ対策でRSウイルスも流行が抑えられ、結果的に0~1歳児が感染して免疫を獲得する機会が少なかった」と指摘。社会活動が戻りつつある今年、その反動が起きているとの見方を示す。
夏のRSウイルスは高温多湿で流行しやすいとの研究結果があり、今年は西日本や東海地方が平年より早く梅雨入りしたことが影響している可能性もある。
「予防の基本は手洗い。他のウイルスより感染力が強いので、自宅や保育園でも子供がよく触る場所やおもちゃをアルコール消毒することも有効だ」と橋本氏。「ゼーゼー」と呼吸をするなどの重症化のサインがあれば、「夜間でもすぐに医療機関を受診してほしい」と強調した。
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