2021/07/22【新型コロナウイルス:COVID-19】感染者爆増の東南アジア各国で「中国製ワクチンの中身」に疑問噴出中
ASEAN(東南アジア諸国連合)各国で使用されている中国製のコロナウイルスワクチンに対して、その有効性、安全性への疑問が広がっている。このため中国製ワクチンの接種を取りやめたり、米英のワクチンへの切り替えを急いだりという動きが顕著になりつつある。
中国は感染拡大予防のために東南アジア各国に対して早い時期から中国製ワクチンを積極的に供与する「ワクチン外交」を展開、インドネシア、ミャンマーなどには中国の王毅外相が直接訪問してワクチン提供を申し出たりした。
東南アジアだけでなくアフリカや南米などに対しても中国は「人道支援」を唱えて「ワクチン外交」を展開しているが、根底にあるのは習近平国家主席が独自に進める「一帯一路」構想で、中国側への取り込みを意図したものとされている。
欧米や日本では中国製ワクチンの安全性が確認できないとして米英が開発したワクチン接種を積極的に進めている。中国当局は自国製ワクチンの詳細な情報を公開していないとされ、提供を受けた国は独自に検査、研究機関でその安全性を確認した上で使用を認可、接種に踏み切っている。
それでも、有効性が米英のワクチンに比べて低いことが知られており、それが中国製ワクチン接種拡大のネックになっているという。
インドネシアで医療関係者の感染相次ぐ
インドネシアでは2021年の感染拡大を前に中国から提供されたワクチンを医療関係者に優先接種した。しかし2021年6月以降、中国製ワクチンを接種した医療関係者の感染が拡大し、感染死する医師や看護師が増えだした。感染者は約300人、死者10人となっている。
また別の数字では6、7月に感染死した医療関係者は131人に上り、その大半が中国製ワクチンの接種を受けていた、との報道もある。
こうした現象はインドネシアだけでなく、マレーシアやタイでも報告されており、米紙「ニューヨーク・タイムズ」は6月22日、「中国ワクチンに頼った国は今感染拡大と戦っている」との記事を掲載して、その有効性、安全性に疑問を投げかけた。
インドネシアでは中国製の「シノバック・バイオテック」「シノファーム」製の2種類が国民の多くに接種されているが、このうち「シノバック社製」を接種した医療関係者に感染が広がっているとして、「ワクチンの中身はただの水ではないか」とか「死のバック」などと陰でささやかれ、中国製ワクチンの接種を躊躇する動きも出ている。
特に現在、東南アジア各国で感染が拡大しているインド株には有効性が低いとの指摘もある。
こうした動きに加えてインドネシア政府は7月13日、これまでシノバック社製のワクチン接種を終えた医療関係者約147万人に対して、「流行が著しいインド株に対応するため」として3回目として米モデルナ社製ワクチンを接種する方針を明らかにしている。
インドネシアではこれまでに確保したワクチンの総数は1億2274回分で、そのうち中国製ワクチンは約1億回分に達しているといい、依然として中国製が中心の接種となっている。
マレーシア、タイも中国製に懸念
7月15日、マレーシア政府は全土で中国製ワクチンの接種を中止する方針を明らかにした。
アドハム・ババ保健相はケランタン州政府が中国製「シノバック」ワクチンの接種を停止するとの方針を受けて「いずれ全国での同ワクチンの接種を停止することになる」との姿勢を示した。
理由に関しては「ファイザー社製など他のワクチンが十分に確保できそうだから」としており、中国製ワクチンの有効性や安全性への疑問を明確にはしなかったものの、国民の多くが「中国製ワクチン接種への不安」を抱えていることが背景にあるのは間違いないとみられている。
タイでは7月17日に1日の感染者数が初めて1万人を超えた。政府はバンコクに「ロックダウン(都市封鎖)」「夜間外出禁止令」を出すなど強力な感染防止策を講じている。
その一方で、1回目に中国製ワクチンの接種を受けた国民に対して、2回目の接種をアストラゼネカ社製ワクチンに変更する計画であることを明らかにした。
これは中国製ワクチンを2回接種した医療関係者600人が感染し、看護師1人が感染死、1人が重体になっている状況などから中国製ワクチンの有効性に疑問が生じたためと言われている。
またベトナムでも、南部の中心都市ホーチミンを中心に感染拡大が続いており、特にこれまでのワクチンの効き目が薄いとされるインド株による感染拡大が深刻化しているという。
未だ中国製ワクチン頼りの国も
一方、カンボジアやラオスなど、いわゆる「親中国」とされる国では依然として中国製ワクチンの接種を積極的に推奨し、約99万回分の提供を受けている。両国では政府による「言論統制」の影響もあり、中国製ワクチンへの不安や不信は今のところ公には伝えられていない。
ラオスのこれまでの感染死者数は公式発表では4人となっているが、カンボジアではすでに1000人を超えている。
中国系国民が多いシンガポールは、そもそも中国製ワクチンに関して「信頼できる有効性に関するデータがない」として国民の接種に関する公式データには「希望して接種した中国系住民や在留中国人」を含めていない状況だ。
2月1日に軍によるクーデターが起きたミャンマーは、実権を握った軍が親中国ではあるが、多くの医療関係者が軍政反対の立場から「不服従運動(CDM)」に参加して職場放棄していることから、コロナ対策は不十分。軍政は軍の医師や看護婦を動員して対応しているが、治療対象者は軍兵士や警察官とその家族に限定されているという。
軍は一般病院から不足している酸素も「奪取」しているとされ、一般国民に十分な感染防止対策がとられているとはいえない状況が続いている。
ミャンマーでの感染者数、死者数も軍政が公表している数字と人権団体などによるデータの差が大きく、実態は不明ながらも相当数の感染者、死者がでているものとみられている。
日本政府によるワクチン提供
インドネシアはさらなる中国製ワクチンの導入を進める傍ら、7月1日には日本政府から英アストラゼネカ社製ワクチン100万回分の緊急提供を受けた。そして7月に入ってファイザー社製ワクチンの使用を緊急認可し、複数のワクチンで国民の要望に応えられる数の確保を進めている。
しかしその一方で、依然として中国製ワクチンの提供も受け続けている。中国政府への配慮とともに、人口世界第4位の2億7000万人分のワクチン確保には中国製も不可欠とする政府の思惑があるといわれている。
同じように日本からアストラゼネカ社製ワクチンの提供を受けたのはフィリピン(100万回分)、タイ(105万回分)となっており、いずれの国でも中国製ワクチンから米英のワクチンへの移行が進んでいる。
在留外国人の脱出、渡航制限相次ぐ
こうした過酷な状況の中、インドネシア在留の外国人の「脱出・避難」も始まっている。日本に続いて韓国や台湾、ベトナムも自国民のインドネシア退去を進めている。
またその一方、爆発的な感染拡大でいまや東南アジアだけでなく全世界で最も深刻な感染国になってしまったインドネシアからの入国を制限する国も出てきている。
これまでにサウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーン、台湾、香港がインドネシア人の入国を原則禁止し、近くフィリピンも制限に踏み切るという。
このように在留外国人の脱出、インドネシア人の入国制限と「孤立」するインドネシアだが、ジョコ・ウィドド大統領は相変わらず地方で続くワクチン接種を視察するのが主な仕事となっており、閣僚らも「コロナ対策に全力を挙げている政府を信用するように」と唱えるだけで、ロックダウンや夜間外出禁止令などの徹底的な感染防止策には「経済活動に影響がでる」として踏み切れない状況が続いている。
首都ジャカルタのあるジャワ島と、バリ島のあるバリ州では「緊急大衆活動制限(PPKM Darurat)」というこれまでより一段厳しい行動制限を7月3日から実施しているが、ジャカルタ中心部は公共交通機関や主要道路の利用制限で閑散としているものの、タナアバン地区など伝統的な市場や商店街には人が溢れている。
まさに「命に関わる危機」がインドネシア国民に差し迫っているというのに、感染拡大を必死に防止するという姿勢は依然としてみられない。
https://news.yahoo.co.jp/…/22667285956b10002b376579001c…