2021/07/31【新型コロナウイルス:COVID-19】「3回目」の新型コロナワクチン接種が必要な理由 デルタ型変異ウイルスの脅威
3回目の追加接種が現実味
河野太郎行政改革担当大臣は、新型コロナワクチンの3回目の接種、すなわちブースター接種について「来年打つことになるのではないか」と述べました。
イスラエルでは、16歳以上において8割を超える人が2回の新型コロナワクチン接種を終えています。かなり高い接種率ですね。
しかし、世界的にデルタ型変異ウイルスが猛威をふるっており、高い接種率を誇るイスラエルでさえも、新規感染者数が増加している現状があります。
そのため、日本に先駆けて、イスラエル政府は2021年8月から「3回目」の新型コロナワクチン接種を開始することを決定しています。対象は、2回目の接種から5か月以上経過した人です。
現在私達が接種している新型コロナワクチンは、2回の接種だけでは効果がないのでしょうか?
時間の経過とデルタ型変異ウイルス
実は、新型コロナワクチンによる抗体のレベルは、時間の経過とともに低下することが明らかになっています。ただ、低下速度は経過とともに緩やかになり、発症半年くらい経過しても、ある程度抗体は維持されます(1)。個人的にも、かなり長い期間大丈夫だろうと思っていました。
しかし、従来型のウイルスやアルファ型変異ウイルスとは異なり、感染性が強く免疫逃避も存在するデルタ型変異ウイルスが相手となるとどうやら話が違うようです。また、これほど短期間で、こういった変異ウイルスに置き換えられることも、専門家にとって想定外でした。
ファイザー社製ワクチンの場合、たとえばイギリスにおいてデルタ型変異ウイルスに対しても88%と高い有効性が報告されています(2)。そのため、2回接種すればひとまず新型コロナに対する免疫が得られることは間違いありません。
しかし、イギリスよりもはるかにスピーディに接種が進んだ”先駆者”イスラエルの新規感染者は、この数字からは説明できない増加でした。つまり、時間の経過とともに効果が薄れている懸念が出てきたのです。
2021年6月20日~7月17日のイスラエル保健省のデータによると、ファイザー社製ワクチンの感染予防効果が想定よりかなり低い39%と報告されています(表)。
まだ論文化されていないため、どこまで信用してよいか議論の余地がありますが、デルタ型変異ウイルスを相手にしている現在、経時的にワクチンの感染予防効果が減弱していることは間違いなさそうです(図)。
幸いにも、重症化予防については一定の効果が維持されています。そのため、ワクチンが全く功を奏さず、新型コロナでバタバタと死んでしまう事態は以前ほど多くないと言えます。
とはいえ、新型コロナの新規感染者を減らさないことには収束にいたりませんので、やはりこの39%という数字をどうにかしなければいけないということです。
まとめ
「抗体の量が全てだ」と言わんばかりのデータを紹介しましたが、実際に抗体が機能するか、また必要なときに抗体を作ることができるか、という能力のほうが重要とする意見もあります。抗体の量は多くなくても、長期的に免疫を”記憶”できている可能性もあります(4)。2回の接種を終えて長期間が経過しても、重症化しない人がまだまだ多いのは、そういう理由があるからかもしれません。
それでもなお、ワクチンの3回目の接種が必要とされるのは、新規感染者をおさえなけば、収束の道が見えないためです。
繰り返しますが、ワクチンの効果が決してないというわけではありません。2回接種すれば十分な免疫が得られます。ただ、デルタ型変異ウイルスが主である現在、長期間効果が持続しない懸念が出てきたということです。
現在、mRNAワクチンを開発したファイザー社およびビオンテック社は、ワクチンの追加接種を承認するようアメリカに求めています。実際、3回の接種でデルタ型変異ウイルスに対する中和抗体価を18-55歳で5倍以上(対2回接種後比)、65-85歳で11倍以上(対2回接種後比)上昇させることが報告されています(5)。
しかし、現時点では両社の主張は受け入れられておず、アメリカ食品医薬品局(FDA)とアメリカ疾病対策センター(CDC)は共同声明において、「現時点で追加接種を受ける必要はない」と回答しています。
また、1回も接種できていない国民が多い国もたくさんあることから、人道的な観点から3回目を推し進めることがよいのかどうか、世界的に議論される余地があります。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210731-00250669