2021/08/14【食中毒、食品衛生】命に関わるO157感染症 どう防ぐ?…トングは肉用と野菜用を使い分け
夏から秋にかけては食中毒が増える時期です。腸管出血性大腸菌「 Oオー 157」による感染症は、その代表例。感染力が強く、合併症により命に関わることもある怖い病気です。肉を食べる際はしっかり加熱するなど対策を徹底しましょう。
腹痛や発熱、下痢
人間や動物の腸の中には、様々な種類の菌がいます。O157は病気につながる菌の一つで、牛や羊などの家畜の大腸内にいます。食肉を製造する工程で腸内のO157がまれに肉の表面に付いたり、家畜のふん便に含まれた菌が排水や土壌を介して農作物に付いたりすることがあります。
菌の付着した食物を体内に入れると、3~5日の潜伏期間を経て、O157が出す「ベロ毒素」という物質により大腸の細胞などが破壊されます。ベロ毒素を生む菌は「腸管出血性大腸菌」と呼ばれ、ほかにO26、O111などがあります。感染経路の多くは食品によるものですが、患者の便が付いたものから感染する場合や、家畜に触れて感染するケースもあります。
代表的な症状は、腹痛や発熱、下痢です。やがて下痢に血が混じり、真っ赤な血便が出る人もいます。出血性大腸炎とよばれ、こうした症状が1~2週間続きます。決め手となる治療法はなく、対症療法が中心になります。水分の摂取や点滴により脱水症状を防ぎ、食事は、おかゆのような消化の良いものを取ります。
命に関わる合併症
溶血性尿毒症症候群(HUS)という合併症では、赤血球が破壊されることで貧血や急性腎障害などに陥り、輸血や人工透析が必要になる場合もあります。腸炎が重症化したり、HUSを合併したりした時には入院が必要です。さらに、ベロ毒素が脳に回って脳症を併発すると、意識の混濁やけいれんを引き起こします。
出血性大腸炎を発症した人のうち、HUSや脳症などの合併症が起きる割合は1~10%とされます。1996年、堺市で起きた学校給食を原因とするO157の集団食中毒では、患者約9500人のうち100人以上がHUSを発症して3人が死亡し、2015年、HUSの後遺症でさらに1人が亡くなりました。
大阪府立大教授の山崎伸二さんによると、O157は感染力が強く、50個程度でも体内に入れば症状を引き起こします。胃液でも殺菌されませんが、75度以上、1分以上の加熱で死滅します。肉は内部まで確実に火を通すなど、食材の加熱が予防の一番のポイントです。子どもや高齢者は生肉を食べるのはできるだけ避けましょう。
野菜は流水で洗い、菌を落とします。包丁やまな板などの調理器具は洗剤で洗い、熱湯をかけて消毒します。調理器具やはし、トングは、肉用と野菜用を使い分けます。調理や食事の前、トイレの後にはせっけんで手を洗うことも大切です。
同府貝塚市の市立貝塚病院小児科部長の森口直彦さんは「O157による感染症は、食材の加熱といった基本的な対策で防げます。野菜は軽くお湯にくぐらせることで、水洗いよりもさらにリスクを減らせます。小さな子どもやお年寄りのいる家庭では、そこまで徹底してください」と話しています。