2021/09/01【新型コロナウイルス:COVID-19】ハワイで感染爆発 ワクチン接種率7割でも再ロックダウンの可能性 /アメリカ

ハワイで、感染者数が爆発的に増えている。病院は満床になり、オアフ島ではレストランやジムへの出入りにワクチン接種証明の提示が義務付けられることとなった。住民のワクチン接種率はおよそ7割で、ほんの数カ月前まではコロナ以前のような生活に戻っていたハワイで、なぜ再び感染が増加しているのか。現地在住の筆者が最新情報を紹介する。
1日約700人が感染、医療崩壊の危機
ハワイに激震が走ったのは、2021年8月13日のことだ。人口約140万人のハワイで、新規感染者数が1167人となった。8月以前の新規感染者数は、最大でも1日300人台だ。しかも2020年12月から始まったワクチン接種のおかげで、2021年に入ってからは感染者が目に見えて減少し、2021年2月から7月頃までは、1日の新規感染者が50~60人程度で推移していた。
8月13日の1167人の感染者には、州のシステムの不具合により、前日と前々日の感染者数の一部が含まれていたのだが、それ以降も1日の新規感染者は500人から800人と高い数字のまま。一向に感染者数が減少に転じることがなく、ついに8月27日には過去最高となる1日1035人を記録した。8月30日時点で、直近7日間の平均感染者数は874人だ。
ハワイ最大の民間医療機関であるクイーンズメディカルセンターは、8月中旬には集中治療室が満床となっていることを発表。増え続ける新型コロナ患者に対応するため、緊急性のない患者の手術や処置の延期を開始しているという。さらにクイーンズメディカルセンターの西オアフセンターは8月20日、院内の緊急事態を宣言。患者に対応する人手が不足していることを訴えている。
またホノルルの救急医療サービスでは、日本の119番にあたる緊急通報が、通常は1日250件程度なのに対して、8月には1日390件ほどの連絡を受けるなど、記録的に増加しているという。
アメリカ連邦政府の緊急事態管理庁から4600万ドル(約50億円)の支援を受け、500人の医療従事者がアメリカ本土からハワイに派遣されることとなっているが、ハワイの医療は崩壊の危機に直面している。
7割がワクチン接種。にもかかわらずなぜ急増?
現在ハワイのワクチン接種率は、1回目が終わった人は71.4%、2回とも終了した人は63.1%だ。それにもかかわらず感染者が急増しているのは、デルタ株の影響が大きい。
ハワイ州保健局は2021年6月下旬、オアフ島、マウイ島、ハワイ島、カウアイ島と、ハワイの4つの島で合計13件のデルタ株を検出したと発表していた。
しかしそれまでは、感染者数は低いまま推移していたため、ハワイ州では7月8日から屋内の集会は25人まで、屋外なら75人までと制限を緩和した。さらに、現地の学校の夏休み期間と重なり、7月4日の独立記念日をはじめ、多くの家庭で家族や友だちが集まり海遊びやBBQに興じていたことで、感染が一気に拡大したとみられる。
ハワイでは、屋内でのマスク着用義務は続いているが、屋外ではマスクの着用義務は撤廃されている。このような複数の要因が重なり、感染力の強いデルタ株が急激に広まり、8月に入ってから感染者が急増したと考えられる。現在ハワイの新規感染者のうち、93%はデルタ株の感染だという。
また現在新型コロナに感染して入院している人の90%以上は、ワクチン未接種というデータが発表されている。つまりハワイでは、住民のおよそ7割がワクチンを接種しているが、残りの約3割の人々の間で、デルタ株の感染が急激に広がっているということだ。
旅行自粛要請に、接種証明の義務化
感染者の急増を受けてハワイでは8月11日より、集会の人数を屋内は10人まで、屋外は25人までに制限。飲食店では入店できる客数が、収容人数の75%から50%となるなど、規制を引き上げる対応を行っている。しかし感染者が一向に減少を見せないため、イゲ州知事は8月23日の記者会見で、ハワイ旅行を計画している人々に対して自粛を呼びかけた。
さらに8月下旬になっても感染者数は減少するどころか、微増。最近は死者も一定数出ていることから、ハワイでもっとも感染者の多いオアフ島では、レストランやバー、スポーツジム、映画館、美術館などの入場時に、ワクチン接種証明書、または48時間以内の検査での陰性証明の提示を義務付ける措置を、9月13日から60日間行うと決定された。
州知事は、1年前に行われたロックダウンのような措置は、できるだけ避けたい意向を示しながらも、このまま感染者が減少しない場合は再検討すると述べている。また、これまでは2回の接種を終えた人が住民の7割に達した時点で、新型コロナに関する全ての規制を撤廃するとしていたが、この目標も再検討せざるを得ないという。
ハワイでは8月上旬、州職員へのワクチン接種の義務化が決定。現地の多くの医療機関でも、従業員のワクチン接種が義務付けられている。
現在のハワイでは、新型コロナに関するさまざまな規制に反発し、ワクチン接種を拒否する人々の間を中心に感染が拡大し、それにより、再び規制強化を強いられるという、矛盾した状況に陥っている。このことを強く指摘しているグリーン副知事が、ワクチン義務化に反対する人々の間で標的となり、副知事の自宅周辺まで抗議団体が詰め寄っていることが報道されている。
ワクチン接種率が7割に達しても、新型コロナとの闘いはまだまだ終わらないことが明らかとなった、今回の感染爆発。ファイザーやメルクなどの大手製薬会社は、新型コロナ治療薬の開発を進め、一部は最終段階の臨床試験を始めているというが、一般に普及するまでにはまだ時間がかかるだろう。ワクチン反対主義者が一定数いるなか、新型コロナとどのように付き合っていくべきか。新たな課題を突きつけられている。
https://forbesjapan.com/articles/detail/43102

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