2021/09/28【新型コロナウイルス:COVID-19】未承認の新型コロナ抗原検査キット販売疑い 2人逮捕 /京都府
国の承認を受けていない新型コロナウイルスの抗原検査キットを感染の有無が判定できる医薬品として販売したとして、京都の通信販売会社の役員ら2人が警察に逮捕されました。
このキットは中国製で、国の承認を受けたものと比べて数百分の1程度の検出精度しかなかったということです。
逮捕されたのは、京都市中京区にある衛生用品通信販売会社の役員、井筒雅俊容疑者(39)と、社員の稲村知香容疑者(30)の2人です。
警察によりますと、2人は去年12月からことし3月にかけて会社の通販サイトで、国の承認を受けていない新型コロナウイルスの抗原検査キットを、感染の有無が判定できる医薬品として、5人に販売したなどとして医薬品医療機器法違反の疑いがもたれています。
会社のサイトでは、「感染の不安がある人におすすめ」などと宣伝し、1キットを4000円前後で販売して、1000万円以上を売り上げていたとみられるということです。
警察の調べに対し、いずれも容疑を認め、井筒容疑者は「善意の気持ちから販売した」などと話し、稲村容疑者は「コロナ禍で必要とされている商品だと思った」と話しているということです。
このキットは中国製で、警察が民間の専門機関に依頼して調べたところ、国の承認を受けて医療現場などで使われているものと比べて、264分の1の検出精度しかなかったということです。
未承認の抗原検査キットの販売で業者が逮捕されるのは全国で初めてです。
【抗原検査キットとは】
「抗原検査」は、ウイルスに含まれる特徴的な物質を調べる検査で、遺伝子を増幅して検出するPCR検査と違って特別な機器は必要ありません。
鼻の奥を拭った検体などを簡易キットを使って検査すると、15分から30分程度で結果が分かります。
ただ、PCR検査に比べて精度は低く、ウイルス量が少ない場合は感染していても陰性となることがあります。
厚生労働省は、承認した抗原検査キットについては、これまで医療現場などで使用を認めていましたが、27日から一般の人を対象に薬局での販売も特例的に認めることになりました。
一方、国の承認を受けてない抗原検査キットについては、厚生労働省は性能などが不確かだとして、一般の人が感染の有無を調べる目的で使用すべきではないとしてきました。
しかし、インターネットなどでは、診断のためではなく「研究用」として、多くの未承認の抗原検査キットが1セット数百円から数千円程度で販売されています。
【同型キット 自治体で配布も】
警察によりますと、今回の中国製の抗原検査キットは、インターネットの大手通販サイトなどでも、別の業者が研究用として販売していて、自治体などでの使用も確認されているということです。
このうち、京都府与謝野町では先月、お盆で帰省する人などに、今回の事件で販売されていたものと同じ型の中国製のキットをおよそ630セット、無償で配布しました。
その後、町は京都府から「新型コロナウイルスの診断ができると誤解を与えるおそれがあり不適切だ」として指導を受け、配布を中止しました。
同型のキットのウイルスの検出精度が国の承認を受けたものと比べて、大幅に低かったことについて、与謝野町は「コメントできない」としています。
【専門家“偽陰性で拡大も”】
新型コロナウイルスの抗原検査に詳しい、長崎大学の柳原克紀 教授は、「未承認の性能が劣悪な抗原検査キットでは、『偽陰性』となる可能性が高く、使用者が感染しているのにしていないと思い、感染を広げてしまうおそれがあることが大きな問題だ」と指摘しました。
そのうえで、「ウィズコロナの時代では、すべての人がPCR検査を受けることは現実的ではなく、抗原検査自体は有用であり、使っていかないと乗り切れない。抗原検査キットを使う人は、さまざまな製品があり、中身が良いものもあれば、悪いものもあるということを認識しておくべきだと思う」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20210928/2000051832.html