2021/10/11【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナに「オゾン発生器」は推奨されない? 「空気清浄機」とは似て非なるもの

■一部の学校で設置されるオゾン発生器

ある自治体が、公立の幼稚園・小中学校にオゾン発生器を設置していると報道されました。新型コロナウイルス対策としてエビデンスが明確でないことから、地域医師会がオゾン発生器を使用しないよう要望書を提出しました。
現在、空気中にウイルスを減らす可能性のある物質を噴霧させる「空間除菌」は推奨されていません(1)。約1年前に二酸化塩素などを噴霧して空間除菌することが流行しましたが、景品表示法に違反する行為として措置命令が出された企業もありました。
厚労省には、以下のような記述があります(1)。「人がいる環境に、消毒や除菌効果を謳う商品を空間噴霧して使用することは、眼、皮膚への付着や吸入による健康影響のおそれがあることから推奨されていない」、「消毒剤の空間噴霧は、空気や環境表面の除染方法としては不十分であり、日常的な患者ケア区域における一般的な感染管理として推奨しない」。
オゾンには、確かに新型コロナウイルスを抑制する効果が示されています(2)。しかし、空間に噴霧する場合、かなり高湿度環境下でしか効果が得られない可能性があります(3,4)。また、濃度(ppm)×時間(分)が小さいと不活化効果も期待できません。
日本国内の医療機関におけるオゾン発生器の実態を調べた研究(5)によると、オゾン発生器を使用している施設では、9割以上が患者さんのいるエリアで使用されていたとのことでした。また、この研究で測定されたオゾン濃度は労働衛生的許容度を超えており、呼吸器系への悪影響が出てしまう懸念があります。
実地でのエビデンスが確立されないまま、多くの団体でなし崩し的に使われ始めているような印象です。
いずれにしてもオゾン発生器自体が新型コロナに効果的であるという国際的なコンセンサスがない以上、これらのデータによってオゾン発生器が積極的に推奨されるわけではありません。
人間が吸入するというという条件がなければ、新型コロナに対してオゾンが有効な選択肢となることは間違いありません(6,7)。しかし、学校や家庭レベルで「空間に噴霧しても大丈夫か」という議論は、もう少し慎重に進められるべきではないかと思います。
先ほど紹介した日本国内のオゾン発生器に関する研究(5)では、ネット販売しているオゾン発生器の76%で、オゾン発生率・適用範囲・使用時間などの情報記載が不足していたそうです。
薬機法が最近改正されました。消毒や滅菌といった医薬品としての効能効果をうたってこれらの雑貨を販売すると問題になります。自治体含めた多くの団体が関わっていることですし、各都道府県の薬務担当の判断が重要になると思います。

■空気清浄機はどうか?

空間洗浄の雑貨とは異なり、適切な空気清浄機は新型コロナに有効です(8,9)。HEPAフィルターは、JIS規格で定格風量で粒径が0.3µmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもつ高性能フィルターのことですが、これが組み込まれた空気清浄機は、新型コロナにも効果が高いと考えられます(10-12)。
空気清浄機を使うときの重要な点としては、極寒の冬や外気が汚染されている場所以外ならば、換気と併用したほうがよいということです(図)。

■まとめ

空間除菌と呼ばれる類のものは、現時点では明確なエビデンスがなく推奨されません。HEPAフィルター付きの空気清浄機は効果が高く、推奨してよい水準と思います。しかし、それらよりも、十分な換気をおこなって3密を避け、マスクを着用し、手洗いなどの手指衛生をこころがけるほうが重要と考えます。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20211011-00262606

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