2021/10/29【新型コロナウイルス:COVID-19】専門家は語らない、コロナに関する不都合な統計データのすべて 緊急事態宣言解除後も減り続ける感染者数が意味していること

新型コロナの感染拡大が始まって1年半。その間、コロナの専門家は数字を使った科学的な説明を怠ってきたように感じる。
どの対策にどの程度の効果があるのか。何に気をつけなければ、どの程度リスクがあるのか。そして、これまでの対策の成果はどうだったのか──。こういったビジネスの世界では当たり前の検証が疎かにされてきた。だが、論理不明な説明は国民を不安に落とし入れるだけだ。第5波が収束した理由も明らかではなく、コロナ専門家はオオカミ少年化しつつある。
それでは、私たちが知るべき情報は何なのか。以下、統計を専門とする筆者が明らかにしていこう。

■本当に怖いコロナ重症患者の死亡率

コロナの予測モデルを作ってから、毎日のように実績データを更新している。そこで気づいたことがある。重症者数は毎日減っていくが、ほぼ同数の死亡者数が発生しているということだ。
重症者数は累計人数が発表されていないので、重症者数の減少が継続するようになった2021年9月8日から重症者数と死亡者数の2つの数字を比較したところ、重症者数が2009人減少したのに対して、死亡者数は1762人増加していた。重症者数が減る理由は回復するか、死亡するかの二者択一だ。ということは、重症化後、死亡する確率は88%(=1762÷2009)もある計算だ。
ちなみに、厚生労働省が発表している重症化率は1.6%で、死亡率は1.0%である。この2つの数値から計算すると、重症化した62.5%(=1.0%÷1.6%)が亡くなっている。いずれにしても、かなり高い数値だ。10月24日時点で重症者数は202人おり、これに88%をかけると178人、62.5%をかけると126人が亡くなることになる。
ここで最も大事なことは、重症化すると病院では治癒させることができない可能性が非常に高いということだ。通常の病気ならば、入院したらひと安心で、近いうちに退院できると思いがちだ。しかし、新型コロナの重症患者は少なくともそうではない。

■感染者の大半が感染対策を実施していたという事実をどう捉えるべきか?

一方、重症の患者はさておき、中等症の患者に対する治療はまだやりようがある。
厚生労働省作成の「新型コロナウイルス感染症 COVID-19 診療の手引き」という資料がネット上に公開されている。これは医者がコロナ患者をどのように判断し、診療をするべきかをまとめたものだ。残念ながら、この病気には専用の薬はなく、抗ウイルス薬のレムデシビルの投与などと酸素吸入器で酸素飽和度の低下を補完するくらいだ。
ちなみに、重症時に使用する人工呼吸器は数百万円、ECMOは数千万円するが、酸素発生機は数万円で購入することができるので自分でも買える。この病気はそうした準備をした上で、自分の免疫力で回復するしか方法がないのだ。
この診療方法であれば自宅療養でも可能なので、病床を増やす以外の対策も考えられる。コスパを考えれば、病床を増やすよりも、自宅療養の患者に呼吸を維持する手立てを提供する方が現実的かもしれない。
テレビやネットを見れば、自宅療養で亡くなった人を探し出し、苦しんだ人にインタビューし、煽情的な報道を繰り返すメディアが後を絶たない。だが、大事なことは問題の本質を捉えて、限られた時間と資源の中で、いかに多くの人の命を救うか、その代替案を出すことに他ならない。罹患した人々の声を発信することは無駄ではないが、他にすべきことがあるのではないか。
日本国民におけるコロナの累計感染者率は1.3%以上に及ぶ。感染対策の実施率には様々なデータがあるが、感染者の感染対策という点では100%に近い90%台の実施率を誇る。
分かりやすくするならば、マスクしている人の割合と言ってもいい。それが97%だとすると、マスクをしていない人は3%だ。マスクもしないで大勢で会話し、自分はかからないと過信し、感染対策を怠っている人は感染しやすいということは数少ない感染者の話からも想像がつく。その後、感染者が家族のもとに帰り、家庭内感染で感染者が増えたとすると、気を抜いた人の感染率とそうでない人の感染率は少なくとも10倍以上は違うはずだ。
ここで知りたいのは、感染対策をすれば、していない人と比較してどの程度感染率が下がるかだ。

■コロナの感染拡大と「人流」が無関係

緊急事態宣言明けの10月から街は賑わいを取り戻しつつある。潜伏期間が2週間、発症まで平均5.6日の新型コロナと「人流」なるものは無関係であることは既に証明されたと言っていい。以下の記事で詳しく解説したが、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が挙げた5つの要因はワクチン以外統計的に全く関係ない。
行動制限は濃厚接触者に相当する人の数を減らすことに尽きる。会って話をするにしてもマスクや手洗いなどの基本的な感染対策を続ければ、感染はほぼ防げることを証明すべきだ。
これは早い段階から分かっていたことだが、年齢別で死亡率は大きく異なる。新型コロナというウイルスだけで人間が死ぬことはほぼない。持病との合併症という意味では、高齢ほど持病が多いのでリスクが高い。
感染者の死亡率は40代までは0.1%以下であり死ぬことはほぼないが、50代0.4%、60代1.5%、70代5.4%、80代以上14.4%と年を追うごとに上がっていく。また、専用の薬がないことから、十分な免疫力がないと重症化するリスクが高い。ワクチンを接種する方を高齢者から始めたのは、この数字的な背景があるからだ。
そのためか、ワクチン接種を希望しても受けられない20~30代の間で第5波が急速に広まったのは皮肉でもある。実際に、人口に対する感染率は20代が3.5%で最も高く、次いで30代の2.0%、10代の1.6%、40代の1.5%と続く。感染後の死亡率が高い60代以降は0.5%ほどだ。
この数字から、「どうせ若い人は死なない」「当分の間、若者はワクチンを打てない」といったことを背景に、若者の感染者を増やし、家庭内感染を生み出す流れがあったことを否定できない。
ワクチン接種の際に伝えるべきメッセージは、「死亡率の高い高齢者からワクチン接種を進めることをどうかご理解いただきたい。しかし、国民全員が接種できるだけのワクチンは確保していますし、10月末までには希望する方は全員打つことができます。若い方は今しばらく感染対策の周知徹底を宜しくお願いします」という若者向けの配慮ある言葉だったように思う。

■2022年にはインフルエンザを下回る死亡率になっているはず

ワクチンを2回接種すると、未接種の人よりも感染する確率は10分の1程度まで下がる。この数値は厚生労働省新型コロナウイルスアドバイザリーボード資料として毎週発表されているが、ニュースで聞くことがないのはなぜなのだろう。とても重要な情報で、ワクチンの接種率が上がることで、入院を要する者も減り、重症者数も減り、死亡者数も減っている。
そもそもワクチンとは、感染症を予防したり、かかった場合に重症化しにくくしたりする効果があるものだ。ワクチンの効果を説明したモデルは「統計データが語る、次のコロナ第6波では死亡者はほとんど出ない」を参照していただければと思うが、第5波が急速に収束し、緊急事態宣言を解除してから1カ月近く経過しているにもかかわらず、いまだに感染者が減少し続けている理由はほぼワクチンで説明がつく。ワクチンを打つことで救われた命は今後も含めて1万人を超えると推定され、その功績はとても大きい。
日本人は年間138万人が亡くなっている(2019年)。1日当たり3784人にのぼる。新型コロナの10月24日時点での累計死亡者数は1万8191人である。直近365日では1万6474人であり、2019年のインフルエンザでの死亡者数3571の4倍以上なので、対策は必要であったことは間違いない。この他、不慮の事故の代表的なものとして交通事故(4295人)があり、この数字を超えそうな場合は、何らかの対策が必要と言われている。
前回の予測で書いたように、ワクチンの効果で新規感染者数は10分の1以下になり、第6波の波は小波になる可能性が高い。入院、重症、死亡に至る確率もワクチンが下げるため、今後は死亡者数が増えることは考えにくい。死亡者数は、現在の重症者数である202人を大きく超えないということだ。
2022年には、インフルエンザをはるかに下回る死亡者数になると考えると、根絶とはいかないものの、気にすべき感染症でもなくなるであろう。スペイン風邪などの回顧録も「2~3年すると、みんな忘れちまった」なんて書いてあるので、その日が近いともいえる。
もし、感染者が増えるようなことがあっても、ワクチン接種者の抗体検査などの状況を開示しながら、3回目以降のブースター接種を検討すればいいだろう。その際にも、ワクチン接種前と後の違いを統計的に示して、施策に反映させるのは必須だ。
私たちは100%を求めているのではなく、確実に確率を低くしてくれる方法とその確率が知りたいだけなのだ。もう不要な行動規制は御免こうむりたい。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67511

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