2021/11/01【新型コロナウイルス:COVID-19】昨年の一斉休校、感染抑止効果はみられず 全国847自治体を分析
昨年2月、政府が新型コロナウイルスの感染拡大を受けて全国の小中高校などに出した一斉休校の要請には、感染拡大を防ぐ効果はなかったとの研究を、学習院大と静岡大、米ハーバード大のチームがまとめた。10月27日の科学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に論文が掲載された。
学習院大の福元健太郎教授(計量政治学)らは、日本全体の約半数にあたる27都府県の847自治体からデータを収集。昨年3~6月の期間を対象に、休校にした自治体としていない自治体とで人口あたりの感染者数を比べたところ、統計的にはっきりした違いはみられなかった。
たとえば昨年3月末からの1カ月間をみると、いったん感染者が増えてからまた元の水準に戻るという動きは、休校した自治体でもしなかった自治体でも同じだった。むしろ休校した自治体のほうで感染者が多い傾向があったが、統計的に意味があるほどの違いではなかった。
感染者数の増減には、休校したかどうか以外にも、他の自治体に通勤している人の数や人口密度など、さまざまな事情が影響する。このため福元さんらは、住民の年齢構成や収入、学校の児童・生徒数、病院や医師の数、自治体の財政状況、首長の年齢や当選回数などを含む49項目にわたるデータを抽出。これらの条件が似ている自治体のなかから、休校したところとしていないところでペアを作って比較した。
調査の後、子どもが感染しやすいとされるデルタ株の流行が始まった。福元さんは、休校による感染抑止効果は当時と今では変わっている可能性もあるとしつつ、「学校が休みになれば子どもたちが学習する機会が減るほか、心身の発達にも影響が及ぶ。保護者が昼間、働きに出るのも難しくなる。政府は今後、休校を要請するにあたって、慎重に検討するべきだ」と話している。
https://www.asahi.com/articles/ASPC162PVPBWULEI00F.html