2021/12/10【新型コロナウイルス:COVID-19】日本人6割持つ白血球の型、「ファクターX」か 対コロナ
理化学研究所は日本人の約6割にある白血球の型を持つ人では、風邪の原因となる季節性のコロナウイルスに対する免疫細胞が新型コロナウイルスに対しても反応することをみつけた。細胞実験レベルだが、コロナウイルスへの交差免疫があり、日本人で新型コロナの重症者などが少ない要因「ファクターX」の一つである可能性があるという。
成果は英科学誌に掲載された。
ウイルスが体内に侵入すると、抗体ができるだけでなく様々な免疫反応が起こる。免疫細胞の一つ「キラーT細胞」はウイルスに感染した細胞を探して殺す。キラーT細胞はウイルスのたんぱく質の断片「ペプチド」を認識して活性化する。ペプチドには様々な種類があり、白血球の型によってキラーT細胞が反応するペプチドが異なることが知られている。
研究チームは日本人の約6割が持つ「A24」という白血球の型に注目した。このタイプの人の血液の細胞を取り出し、ウイルスのスパイクたんぱく質の一部であるペプチド「QYI」を投与すると、キラーT細胞が活発になり増殖することをみつけた。
QYIで働きが活発になったキラーT細胞に、季節性コロナウイルスと新型コロナウイルスのペプチドをそれぞれ加える細胞実験をした。キラーT細胞はどちらにも同じように働いた。季節性コロナに感染した経験があれば、交差免疫として新型コロナでも働く可能性が確認できたという。
日本は新型コロナでの重症化や死者が少ないという見方があり、その要因を探す研究が進んでいる。A24の白血球の型は欧米人では1~2割程度しか持たない。理研の藤井真一郎チームリーダーは「ファクターXの一つであるといえる状況だろう」と話す。ただ今回の実験は細胞実験にすぎない。実際にA24を持った人の感染時の状況などを詳細に調べる必要がある。