2021/12/15【人獣共通感染症】人獣共通感染症 ペットからの感染注意 かまれるなどして皮膚に症状
コロナ禍で外出を控える生活が続く中、新たに飼育されるペットの数が2020年には犬は14%、猫は16%増えたそうです。身近に犬、猫、ハムスターなどペットを飼い始めた人もいらっしゃるのではないでしょうか? ペットを飼う場合には動物と人の間で共通して起こる感染症(人獣共通感染症)について知識を持つことが大切です。
今回はペットからうつる皮膚の感染症についてお話ししましょう。一つはペットからうつる真菌症(たむし)で、カビの一種が原因です。猫から感染しやすいのはミクロスポルム・カニスという菌で、足や爪の水虫とは異なる真菌です。猫と接触する部分にかゆくて赤い皮疹が出て広がっていきます=写真=。首や腕、顔などによく感染します。頭の皮膚に感染するとその部分の毛が抜けてしまうこともあります。さらに家族や友人などにうつることもあります。
一般に猫の5~25%はこの菌を持っていますが、症状がないか、あっても軽いことが多いといわれています。しかし猫も感染した部分が脱毛してしまうことがあります。人だけ治療しても猫に菌が残ると再感染を起こすので猫も治療をしてもらうよう勧めています。
もう一つは猫や犬からの細菌感染です。猫にかまれたり、ひっかかれたり、傷のある部分をなめられたりするとバルトネラ・ヘンセレという菌による「猫ひっかき病」という病気になることがあります。2~3カ月で自然に治ることもありますが、リンパ節が腫れて熱が出ることもあるので、治りが悪ければ早めに治療を始めた方がよい病気です。手をひっかかれると脇の、足をひっかかれると足の付け根のリンパ節が腫れます。猫の10~15%がこの菌を持っているといわれていますが、猫には症状はありません。
菌の伝搬にはネコノミが関与しています。感染した猫の血を吸うことによってネコノミの体内に菌が入り増殖してネコノミのふん便中に排泄(せつ)されます。それが猫の歯や爪に付着して、猫から人あるいは猫と猫の間で、傷付いた皮膚を介して感染が広がります=図=。頻度は少ないですがネコノミから人への直接感染もあります。もし猫にひっかかれた後でリンパ節が腫れたり、熱が続いたりした場合は、猫にひっかかれたことをぜひ医師に伝えてください。治療の助けになります。
その他にパスツレラ・ムルトシダという細菌の感染も猫や犬にかまれたり、ひっかかれたりしたところに起こります。数日~10日後に赤く腫れて痛みを伴い、ひどいときはうみを持ったり、熱が出たりリンパ節が腫れたりします。通常は抗菌薬で治りますが、重症化したり後遺症を残したりすることがあるので注意が必要です。この菌は猫ではほぼ100%、犬では約75%が口の中や喉などに保菌していますが、症状はほとんどありません。
人獣共通感染症をよく知ってペットとの癒やしのある生活を安全に楽しみたいですね。
(岐阜大学名誉教授、朝日大学病院皮膚科教授)