2022/02/13【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナの感染症法「5類」引き下げの課題は 医療費の負担増え、医師「受診控え起きかねない」
新型コロナウイルスの第6波で主流になったオミクロン株。デルタ株に比べ重症化のリスクが低いとされ、感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げるよう求める声も出始めた。だが一方で感染防止に向けた行政の関与は大幅に弱まり「自己責任」が求められる側面がある。医療費の全額公費負担がなくなる恐れもあり、沖縄県内の専門家は「受診控えが起きかねない」「公的支援は続けるべきだ」と指摘する。
感染症法は、病原体の危険度が高い順に感染症を1~5類に分類する。新型コロナウイルス感染症は、これとは別の枠組みの「新型インフルエンザ等感染症」に指定されており、入院勧告や就業制限など「1~2類」に相当する強い措置を取ることができる。1類でも認められていない「外出自粛の要請」も可能だ。
しかし感染力が強いオミクロン株によって感染者や濃厚接触者は急増し、保健所や自治体の業務は逼迫(ひっぱく)。社会や経済活動にも支障が出た。デルタ株に比べ毒性が低いことも分かり、県外の有力な首長や国会議員からは、5類への変更を求める発言が相次いでいる。
一方で公的支援の必要性は高く、慎重な意見もある。感染症に詳しい県立中部病院の高山義浩医師は「5類に引き下げれば、まん延防止に向けた行政の役割は後退する。高齢者施設などで集団感染が起きても施設側の責任となり、県が医療関係者を派遣したり濃厚接触者を検査したりする予算は根拠を失う」と拙速な見直しには否定的だ。
さらに懸念するのは医療費の負担増。現在のように全額公費で賄うのは難しい。コロナの治療薬は数万円~数十万円とされ、公的医療保険を使っても相当な支払いが必要で「受診控えが起きてもおかしくない」とみる。
現在、入院や積極的疫学調査の対象者を絞るなど、すでに一部の措置は「5類相当」になっている。高山医師は「感染症法上の位置付けは当面維持した上で、柔軟な運用で対応する方が現実的だ」と説く。
筑波大学客員教授の徳田安春医師は、5類への見直しに一定の理解を示しつつ「医療費の公費負担や自宅療養者への配食などは継続すべきだ」と条件を付ける。検疫などの水際対策が弱まることも危惧し「毒性や感染力の強い新たな変異株が出てくる可能性がある。まだ警戒を解いていい段階ではない」と指摘する。