性感染症の「梅毒」の感染拡大が続いている。国立感染症研究所によると、2021年の全国の感染者は7873人(速報値)で、現在の調査方法となった1999年以降で最多となった。コロナ禍でインフルエンザなどの感染者が減る一方で梅毒が広がる理由について、専門家はSNSを通じた不特定多数との性交渉の増加などを挙げている。
梅毒は、主に性的な接触により、性器や口、肛門などの粘膜や皮膚の小さな傷口から感染する。典型的な初期症状は皮膚のしこりや潰瘍だが、ほかにも多様な症状がある。症状が治まっても治癒したわけではなく、放置すると心臓や脳に障害が起きることもある。
戦後は20万人以上の感染者がいたとされる。治療薬(抗菌薬)の普及で感染者数は激減したが、2010年代以降に急増。19、20年は減ったが、21年は再び増えた。
男性は20~50歳代前半、女性は20歳代が多い。増加に転じた当初は海外からの持ち込みも指摘されたが、現在は日本人同士で感染が広がっている状況という。
大阪健康安全基盤研究所の川畑拓也・ウイルス課主幹研究員は明確な理由は不明としながらも、「SNSを通じた出会いの増加や性風俗サービスの多様化のほか、流行の拡大を受け、梅毒を疑って積極的に検査する医師が増えているのかもしれない」と語る。
梅毒の検査は多くの自治体で保健所などのエイズウイルス(HIV)の無料匿名検査と同時に受けられる。