2022/02/15【研究報告】新型コロナは「ただの風邪」ではなかった!? 医学誌Nature Medicineが公表した驚きの論文
人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し、感染症医・神戸大学教授の岩田健太郎氏が「安心して読める健康の教科書」と推薦文を寄せています。本記事はそんな森氏の緊急提言です。
■「後遺症」に関する論文が発表!
新型コロナウイルスに関して、最先端研究に特化した生物医学ジャーナル「Nature Medicine」誌から興味深い論文が公表されました。
その論文の内容としては、アメリカ合衆国の退役軍人省のデータベースを元に、COVID-19に罹患し、最初の30日間を生存した米国退役軍人の15万3760人もの集団データを対象に発症後1年間の後遺症について調査された研究です(※1)
この研究の結果としては、感染後1年間の
・不整脈、心臓の炎症、心筋梗塞といった心臓に関する疾患
・脳梗塞などの脳血管障害
・血栓塞栓症(足などの血管に血栓が詰まる病気)
こうした「血管」に関連する病気に罹患するリスクが上昇した、というものでした(例えば心筋梗塞は心臓の「血管」が詰まる病気、脳梗塞は脳の「血管」が詰まる病気です)。
重症度の高い人の方がリスクが上昇する割合が大きい傾向にありましたが、入院の必要がなかった「軽症」の人達においてもそのリスクは上昇しておりました。
もともと新型コロナは「ACE2」と呼ばれる受容体に、ウイルスの「スパイク」という、とげとげの部分が結合することで感染すると言われています。そのため、このACE2受容体が血管にも分布していることから血管の炎症や、血栓ができやすくなる傾向になることはよく指摘されていました。
そして「1年間」という感染後一定の期間においても、こういった「血管」にまつわる疾患のリスクが上がる可能性が示唆されたのです。
とはいえ、現段階では闇雲に恐れる必要はありません。
■今、あなたがすべきこと
この研究では感染後30日間を「生存した」人々を対象に行われているとはいえ、1年間のリスク増加という表現に留まっています。感染後「2か月後」と「10か月後」を比較した場合、徐々にリスクが低下していく可能性もあります。
なので、今後10年単位などロングスパンで見た時にどういった評価になるのかはまだわかりません。
闇雲に恐れる必要はない一方で、今後長期的にこういった脳や心臓などの血管に関連した病気に罹患するリスクが上昇する可能性も否定はできません。
その場合は、例えば脳の血管の劣化によって引き起こされる「脳血管性認知症」といった病気の患者数が今後増加する事もあるかもしれません。
だからこそ感染した人にも、そしてまだ感染していない人にも伝えたいのは、「自分の血管をできるだけ良い状態でキープする取り組みをしていこう」です。
例えば喫煙、運動不足、生活習慣病…こういった要因によって血管の「動脈硬化」が進行し、脳梗塞や心筋梗塞といった、血管に関連する病気のリスクが上昇します。
コロナももちろん怖いですが、明らかに血管にダメージを与えると証明されているこれらの生活習慣対策を行うことができれば、血管に関連する病気のリスクは下げられます。
当然「感染しない」のが最も良いです。しかし現状、十分な対策を取っていても感染してしまうこともあるでしょう。
だからこそこれを機に、喫煙、運動不足、生活習慣病といった「血管の病気のリスク」と向き合い、日々の生活習慣を見つめ直し、予防医学に触れるきっかけにしていく。
こういうポジティブな捉え方、考え方をするのはいかがでしょうか。
このコロナ禍で自分の体と向き合うのは必須の時代となりました。「どうにもならないこと」がある一方で、「自分で変えられること」もあります。簡単な対策から一歩一歩始めていきましょう。