ウイルスと細菌はどちらも重病を引き起こす難敵だが、厄介なことに、同時に感染しやすいことが知られている。
なぜ同時感染するのか。大阪大学などの研究チームは、インフルエンザウイルスに感染すると、細菌も感染しやすくする「足場」のような物質が細胞の入り口に現れていることを実験で突きとめた。
インフルは例年国内で1千万人が感染し、多い年には高齢者を中心に1万人が重症の肺炎などで亡くなる。
ただ実際には、肺炎球菌などの細菌にも感染して肺炎が重くなっていることが多い。
世界で数千万人が亡くなった1918年からのインフル流行(スペイン風邪)では死者の95%、2009年の新型インフルの流行でも重症者の25~50%が細菌性の肺炎も起こしていたとの研究がある。
詳しい仕組みが不明だったため、阪大の住友倫子講師(細菌学)らはインフルウイルスや肺炎球菌を人間由来の細胞やマウスに感染させた。
その結果、まずウイルスがのどや鼻など上気道の細胞に感染することで、細胞の表面に肺炎球菌が感染しやすくなる足場となるたんぱく質が多く出現することがわかった。
普段は細胞の奥まった場所に存在する「GP96」と呼ばれる物質で、本来はウイルス防御のために細胞表面に移動する働きが、逆に細菌の感染に利用されてしまうようだ。