貝毒の原因となる有毒プランクトンに寄生して死滅させる微生物の新種を発見したと、東北大などの研究グループが発表した。周辺環境や他の生物には無害で、貝毒の予防や原因プランクトンの駆除技術の開発につながる可能性がある。論文が国際科学誌に掲載された。
新種は「アメーボフリア」と呼ばれるプランクトンの一種。まひ性貝毒を引き起こす有毒プランクトンの細胞内で増殖し、数日後、細胞を突き破って飛び出る。西谷豪・東北大准教授(海洋微生物学)らのグループが2019年に大阪湾に生息する新種の存在に気づき、培養に成功した。
グループが大阪湾の海水を調べたところ、有毒プランクトンの密度が最大になった20年3月下旬、後を追うようにこの新種も増え、有毒プランクトンが急減した。室内での培養実験では、新種は98%の有毒プランクトンに寄生し、3日以内に死滅させた。
新種については、宿主となる有毒プランクトンがいない時期の生息地域や生態など、分かっていない部分もある。グループでは新種の発生条件を見極め、貝毒の発生規模や収束時期の予測技術の開発を目指す。西谷准教授は「漁業に打撃を与える貝毒の発生抑制につなげたい」と話す。
プランクトンに詳しい北海道大の今井一郎名誉教授は「研究グループは新種の培養に成功しており、有毒プランクトンを駆除する生物農薬などへの応用が期待できる」と話している。
◆貝毒 =有毒のプランクトンを取り込んだアサリやカキなどの貝が毒素を蓄積し、ヒトが食べることで食中毒を引き起こす。毒素のタイプによってまひ性や下痢性があり、まひ性は呼吸困難などで死亡することもある。国が定める値を超える貝毒が確認された場合、出荷が規制される。