2022/05/01【新型コロナウイルス:COVID-19】高齢者施設の感染拡大どう防ぐ 都市部ならでは…「ゾーニング」難しく 第7波に備える東京

新型コロナウイルス「第7波」に備えて東京都は高齢者施設の対策に力を入れる。第6波では高齢者施設内で感染して死亡する人が300人を超えた。都はウイルスが持ち込まれる前提でいかに感染を広げないかに重点を置くが、敷地が狭い都市部ならではの事情も対策を難しくしており、現場からは「広げないのは限界」と苦悩の声が漏れる。
「隔離がうまくできていれば…」。都内の養護老人ホームで副施設長を務める男性は後悔をにじませた。2月初旬に1人目の感染が判明後、感染力の強いオミクロン株は施設内で急速に広がり、2週間で39人のクラスター(感染者集団)となった。80代後半の利用者の男性は感染後に大腸の持病が悪化。救急搬送時に「コロナ患者は受け入れられない」と近隣で断られ、30キロ以上離れた病院に運ばれた後に死亡した。

◆第6波死亡の3割が高齢者施設内で…

本紙の集計では、1~3月の第6波で死亡した994人のうち、高齢者施設内で感染して死亡した人は312人で全体の約3割に上る。クラスターが発生した件数も保育園や学校と並んで多く、高齢者施設内で感染が広がり、死者が相次いだ実態が浮かぶ。
高齢者施設で感染を広げないためには、患者がいるエリアとそうでないエリアの区域を分ける「ゾーニング」が有効になる。副施設長は必要性を理解した上で、「定員分の部屋しかなく、防護服を脱ぎ着する部屋を余分につくるには限界があった」と振り返る。

◆食堂や風呂場は1つ、共用するしかなく

職員を悩ませたのが、都市部ならではの施設の構造だ。食堂や風呂場は地方のように各フロアに造れず、建物内に1つずつしかない。70人の利用者が共同で使わざるを得ず、副施設長は「気が付いたら施設全体にまんべんなく感染が広がっていた」と明かした。
高齢者施設も運営する都医師会の平川博之副会長は「施設は少ない人材で集中的にケアできる造りが多く、ゾーニングには不適。どうしても食事や入浴で利用者同士が接触してしまう」と指摘する。都医師会が第6波で感染者が出た老人保健施設に当時困ったことを聞くと、ゾーニングを挙げた施設は全体の25%に当たる21施設に上った。
そこで都は4月28日、施設が保健所を介さずに感染対策を相談できる専用窓口を開設。普段からゾーニングの方法や防護服の正しい捨て方などについて相談できるようにした。施設で感染者が出た場合は看護師らでつくる新設の「即応支援チーム」が24時間以内に施設を訪れ、「現場の実情に応じた対策を助言する」としている。1日当たり10施設を回れる態勢を想定している。

◆基礎疾患も大敵、転院先確保も急ぐ

第6波では感染後に基礎疾患が悪化して死亡する人が目立ち、コロナ以外の原因で亡くなった人が約2割を占める。
都は第6波で、最大7229床のコロナ病床を確保したものの、感染者の急増で病床が逼迫し、高齢者施設の利用者が入院しにくい事態に陥った。その反省から、介護が必要な高齢者向けの病床やコロナの治療が終わった高齢患者の転院先を増やそうと、受け皿の確保に動いている。
ただ、予想を上回る感染者が出た第6波のように、想定以上の感染者が出れば即応支援チームも、コロナ病床も対応が追い付かなくなる可能性がある。都の担当者は「高齢者が安心して療養できる環境を整備していきたい」と話した。
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