O157の毒素に特殊な炭素を加えることによって「弱毒化」することができたと、群馬大学大学院などの研究チームが発表し、今後、食中毒の予防や治療法の確立につながることが期待されています。
O157にヒトが感染すると「ベロ毒素」と呼ばれる重症化に至る病原性たんぱく質などを生産しますが、根本的な治療法は確立されていないということです。
このため、群馬大学大学院医学系研究科の平川秀忠准教授と化学メーカーなどでつくる研究チームは、蓄電池などに使われる特殊な炭素を、O157に似た病原菌に感染した複数のマウスに投与する実験を行いました。
その結果、何も与えないと感染後、下痢を伴う体重減少があり、9日目までに死んだのに対し、炭素を与えた場合は9日目まで体重減少がなく、最長で2週間生きていたことから、研究グループは毒素を弱毒化できたとしています。
また、この炭素をO157の培養液に加えたところ、炭素が毒素を吸着したことから、ヒトに投与した場合、毒素が全身に広がる前に排せつできる可能性があるとして、研究グループは今後、食中毒の予防や治療法の確立につながることが期待されるとしています。
平川准教授は「O157は幼児や高齢者が重症化して亡くなるリスクが非常に高い。そうした亡くなる人を1人でも多く救えるよう、さらに研究を進めていきたい」と話していました。