2022/05/17【新型コロナウイルス:COVID-19】感染拡大のポイントは空気感染だ 日本のコロナ対策は変わらなければならない(上昌広)
【どうする、どうなる「日本の医」】#28
ゴールデンウイーク(GW)が終わった。政府や周囲の専門家は、人流増が感染を拡大させることを強調するが、果たして本当だろうか。
私が調べた限り、そのような事実はない。一昨年の春の流行のピークは4月15日で、GW中、感染者は減少し続けた。昨年は3月中旬から感染者が増加し、ピークは5月14日だった。GWの前後で、感染者数の増加スピードに変化はない。
日本の感染者数は世界と同期する。一昨年の世界のピークは4月18日、昨年は4月28日だ。今年は、南アフリカやアメリカで既に感染者は増加し始めている。夏の流行の開始が早いようだ。GWの人流増がなくとも、日本でも感染者数が増加に転じるだろう。
私が不思議に思うのは、このあたりの数字は、少し調べれば誰でもわかるのに、政府の専門家たちは牽強付会な理屈を述べることだ。
では、なぜ、大型連休での人流の増加が感染拡大を起こさないのだろうか。この点についても、世界では議論が進んでいる。ポイントは空気感染だ。厚労省や専門家は、飛沫感染にこだわり、3密回避・飲食店の営業を規制してきたが、主たる感染経路はエアロゾルなどを介した空気感染であることが、今や世界的コンセンサスだ。空気感染対策の要は換気だ。
実は、大型連休で混雑が予想される公共交通機関や公共施設は、オフィスや家庭と比較して、格段に換気が良好だ。日本では、2003年にシックハウス対策を目的に建築基準法が改正され、24時間の換気設備の設置が義務付けられている。さらに、コロナ流行後は、公共交通機関などは窓を開け、換気を強化している。
米国も状況は変わらない。だからこそ、4月18日、米フロリダ州の連邦地裁は、米疾病対策センター(CDC)が求めている公共交通機関でのマスク着用の義務化を無効とする判決を下し、同日、米運輸保安局は、公共交通機関でのマスク着用を求めないと発表した。米ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院のデビッド・ダウディ博士は、「地下鉄やバスのマスク着用率が突然10%に低下しても、患者や入院の増加はおそらくわずかで、現在の監視システムでは検出できないレベルでしょう」と話している。
なぜ、最近になって米国は変わったのか。それは、コロナは撲滅できず、うまく付き合っていくしかないことが明らかになったからだ。4月10日、米政権医療顧問トップのアンソニー・ファウチ氏は「各人がどの程度のリスクを負うか考えて行動すべき」と発言している。
国民が自分で判断しなければならないのなら、政府の仕事は国民を統制することではなく、正確な情報を提供し、国民を支援することだ。日本のコロナ対策は変わらねばならない。
(上昌広/医療ガバナンス研究所 理事長)