2022/05/17【SFTSウイルス】「出血熱」ネコやイヌからヒトへ感染 致死率5人に1人、命どう守る
ネコやイヌから、致死率が2割を超える「出血熱」の一種に感染する人が出始めた。もとはマダニが媒介していたが、発症した動物の体液に触れたり、かまれたりしてうつったとみられる。死亡者も出ている。専門家は飼い主、獣医師らに注意を呼びかけている。
■治療したネコから…
「もうろうとして家族のことすら考えられなかった。感染を防ぐ配慮が足りなかったことを反省しています」
宮崎県西都市の動物病院に勤務する獣医師・奥山寛子さん(47)は2018年夏、治療したネコから重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に感染した。重い症状を引き起こし、ネコの致死率は6割とされる。
1歳の雄ネコは、来院した段階で嘔吐(おうと)を繰り返し、40度超の熱があった。
止血の役割を担う血小板が少なくなっており、最初にみた同僚の獣医師がSFTSの疑いがあると診断。後に陽性と確定した。
奥山さんは隔離室に入院したネコを動物看護師と2人で治療。点滴液がもれて血とともに飛散しているのを見つけた。ネコが身震いした可能性があり、ネコの体や床の拭き取り掃除をしたという。手袋を着けており、かまれも、ひっかかれもしなかった。ネコは入院3日目に死んだ。
全身に筋肉痛が出たのは1週間後だ。その2日後には39度近い熱が出て家族の車で夜間病院へ。医師にはSFTSのネコを診療したと伝えたが「ネコから人に感染した例なんて知りません」と言われた。だが、血液検査で血小板の減少が判明。医師の顔色が変わった。大きな病院へ転院、自身も陽性が判明した。
高熱にうなされて意識は混濁。10日間入院した。それでも担当医からは「SFTS患者の中では症状が軽いほう」と励まされた。一緒にネコを診た看護師も発症。看護師は手袋とマスクも着けていたが、ほぼ同時に感染したとみられ、ネコの身震いで飛んだ飛沫(ひまつ)が、目などから入った可能性があるとみられている。
■「ウイルス性出血熱」の一種、マダニ由来が多いが…
SFTSウイルスがヒトに感染すると、嘔吐(おうと)、下血などの消化器症状や発熱が起きる。エボラ出血熱などと同様の「ウイルス性出血熱」だ。
11年に中国で発見され、日本でも最初に確認された13年は48人だった患者が徐々に増加。19年に101人となり、21年は最多の109人の感染が確認された。
これまで西日本が中心だったが、昨年は初めて愛知県や静岡県で発生。千葉県でも17年に患者が出ていたことが判明した。ヒトの致死率は2割以上とされ正式な特効薬はまだない。
日本医療研究開発機構(AMED)の研究班によると、17年から今年3月までに西日本を中心にネコ449匹、イヌ24匹の感染も確認されている。
主には動物やヒトの血を吸うマダニにかまれての感染で、シカやイノシシ、アライグマなどの野生動物の生息域拡大や頭数増加に伴い、ヒトやペットへの感染が確認された地域も拡大していると考えられている。