激しい運動を行っているときは、安静時と比べて、呼気とともに排出されるエアロゾル粒子が平均で130倍に増えることが、最新研究で明らかになった。
この研究は、ドイツの科学者が中心となって行なったもので、「米国科学アカデミー紀要」に、2022年5月23日付けで掲載された。論文著者らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のクラスターが、屋内で大人数が運動を行った状況で多く発生した理由は、この研究で説明がつくとしている。
研究では、18歳から40歳のともに健康な男女8人ずつを対象に、異なる強度の運動に取り組んでいる最中の呼気を測定した。その結果、男女による差異は確認されなかったものの、呼気に含まれるエアロゾル粒子が、運動の強度とともに増加したことがわかった。
また、体力があって持久力トレーニングの経験がある参加者は、持久力トレーニングの経験がない人と比べて、激しい運動中の呼気に含まれるエアロゾル粒子が85%も多かったことも明らかになった。
一般的に知られているように、運動中は呼吸が激しくなる。吸い込む息の量は、安静時は5lから15lだが、激しい運動をしているときには、最大で200lまで増加する。しかし今回の研究では、吐く息に含まれるエアロゾル粒子の濃度も、激しい運動の最中に上昇することがわかった。
この研究では、屋内スポーツ施設(クラス形式とジムの両方)で、新型コロナウイルス感染症のクラスターが多数発生した理由の一部が説明可能だ。研究での知見を活用すれば、より良い感染対策を取り入れて、屋内運動環境の安全性を高めることができるのではないかと、論文著者は提案している。
屋内スポーツ施設のなかには、資金を投じて感染対策を導入したところもある。米バージニア州にあるジムでは、トレーナーの1人が新型コロナウイルスに感染し、接触した利用者は50人もいたが、クラスターは発生しなかった。このジムが実施した最も重要なコロナ対策は、各所にあるドアを開け放ち、自然な換気を促すことだった。
その他の、よりハイテクを利用した対策としては、HEPAフィルター(高性能空気フィルター)や機械的換気設備のほか、室内にいる人が吐き出した空気の量を測定する二酸化炭素濃度測定器などがある。