マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」が西日本から東日本へと、じわじわ広がりつつある。今年の感染確認は、過去最多の百九人を数えた昨年の同時期を上回るペースだ。犬や猫から人に感染したとの報告もあり、森林や草地などに入る際には、ペットも含めて最大限の警戒をしたい。
感染研などによると、二〇一一年に中国で初めて報告されたウイルス性出血熱の一種で、国内では一三年に山口県で初確認された。マダニにかまれたり、感染したペットとの接触で人にうつり、海外では人から人への感染例もある。
西日本を中心に感染は拡大し、昨年、愛知県や静岡県で初確認された。感染研などの調査では千葉県で以前に採取された検体からも感染が見つかっている。今年は六月上旬までの速報値で、昨年同時期と比べて六人多い四十六人の感染が報告されている。
感染すると発熱や下痢などの症状が出て、血液中の血小板や白血球が減少するなど高齢者ほど重症化しやすい。感染研の研究では国内での致死率は30%という。有効な薬剤やワクチンはなく、感染研の確認分だけでも毎年数人から十数人が命を落としている。
ペットにも広がり、治療した獣医師にうつった事例もある。食欲不振や発熱しているペットには要注意だ。犬の散歩時、マダニが潜む草むらには近づけず、散歩後はマダニが付着していないか点検したい。猫を屋外に出さない飼い方や、駆除薬の使用も考えたい。
アライグマやタヌキ、シカ、イノシシからSFTSウイルスの抗体が見つかったとの調査結果もある。これらの野生動物は近年、過疎化や里山の荒廃に伴い、都市部や住宅地にまで生息域を拡大しており、彼らがウイルスを広範囲に拡散させている恐れもある。
マダニの活動が盛んになる季節だ。日本紅斑熱やつつが虫病もマダニが媒介する。人もペットも、とにかくかまれないことだ。農業や林業の現場では、暑さや作業のしやすさも考慮しなくてはなるまいが、野山に入る際は長袖、長ズボンなど肌の露出を極力少なくして防御したい。自治体や関係団体も啓発を進めてほしい。