2022/06/22【新型コロナウイルス:COVID-19】接種済みのほうが感染しやすい!?厚労省コロナ統計の「致命的ミス」
■接種済みなのに「未接種」に
経験や勘で政策を決めるのが、これまでの日本の政治の常識だった。しかし海外では、“思い込み”ではなく、科学的なデータや統計によって政策を立案する「EBPM」(Evidence-Based Policy Making)が主流になっている。
最近では日本政府もこのEBPMに力を注ぎ始めているのだが、今年5月上旬、その前提を揺るがす「大事件」が起きていた。
厚生労働省が公表した新規陽性者とワクチン接種歴についてのデータに、致命的な誤りが見つかったのだ。EBPMは日本語にすれば「証拠に基づく政策立案」となるが、そもそも“証拠”となるデータが間違っていれば、科学的に政策を立案することなど不可能だろう。
いったいどんなミスがあったのか、詳しく見ていこう。
厚労省は、10万人あたりの新規陽性者数を「ワクチン接種済み」「未接種」といった区分で、定期的に公表している。このデータの元になっているのは、新型コロナ患者を診察した医師による聞き取り調査だ。医師は新規陽性者を診る時には、「ワクチンを打ちましたか」「いつ接種しましたか」と尋ねる決まりになっている。
問題が起きたのは、医師が記入する報告データの「日付欄」だった。ワクチン接種日がいつだったかを患者が思い出せなかった場合、医師は接種日を「未記入」で厚労省に送信している。
ところが厚労省側は、本来は「接種済み」となる人でも、日付欄が記入されていないと「ワクチン未接種」という扱いで処理していたのだ。
■専門家が気づいた異常データ
その結果、何が起こったのか。たとえば’22年4月4~10日分の公表データでは、10万人あたりの新規陽性者数はどの年齢階級でも、「未接種」が「接種済み」を遥かに上回っていた。厚労省からすれば、「ワクチンを打っていない人は新型コロナに感染しやすい」という主張の根拠となるデータである。
しかしこれに対し、一部の専門家からは「データが異常ではないか」という指摘が上がっていた。実は今年1月頃から流行していたオミクロン株に対しては、ワクチンの感染予防効果が低いことがすでに判明していたからだ。
指摘を受けた厚労省はミスを認め、4月11~17日分をまとめた公表資料からは、適切な処理がなされるようになった。「ワクチン未接種」の陽性者数は大きく減って、従来とは正反対のデータも公表された。いくつかの年齢階級では、10万人あたりの新規陽性者数について、「未接種」の方が「接種済み」よりも少ないという結果も出ている。
「ワクチンを打っていない人の方が、むしろ感染しにくい」というデータが出てしまえば、接種推進に水を差しかねない。筆者は単純ミスだと思うが、今回の件については「意図的な統計不正」ではないかという憶測も飛び交っている。
確実に言えるのは、政府がEBPMによる政策立案を重視するのなら、今回の厚労省のミスは許されるはずがないということだ。統計データは、我々国民が適切な意思決定をする基盤だ。単なる処理上のミスと侮ってはいけない。政府は常に正しい情報を公表する必要があるだろう。