粉ミルクを飲んだ乳児が次々に細菌に感染して2人が死亡したとするケースがアメリカで報じられ、日本でも、粉ミルクによる食中毒の危険性について衛生関係者がツイッター上などで警鐘を鳴らしている。
米CNNの2022年5月11日付日本語版ニュースによると、米大手メーカーの粉ミルクを飲んだ乳児4人がクロノバクター・サカザキ菌によるまれな感染症にかかり、うち2人が死亡したという。
■食中毒予防のため、70度以上のお湯で溶かす必要
これを受けて、2月にこのメーカーの製品がリコールとなり、工場は操業停止に追い込まれた。その影響もあって、アメリカでは、粉ミルク不足が深刻化しているという。会社はCNNの取材に「今回の調査中に環境テストで検出されたクロノバクター・サカザキ菌は、(ミルクを製造した)スタージス工場の製品に触れない場所にあり、入手可能な2つの患者サンプルや他の既知の乳児の病気とは関連がない」と回答している。
厚労省サイトが紹介した2004年の世界保健機関(WHO)などの説明によると、サカザキ菌とは、環境中に広く確認され、成人が感染しても軽症で済むとされる。しかし、発生頻度は非常に低いとみられるものの、乳幼児が感染すると、髄膜炎や腸炎を発症する可能性があり、神経障害など重い合併症になる場合もある。死亡率は20%~50%と報告されているという。
特に乳児へのサカザキ菌の危険性について、米メディア「ナショナルジオグラフィック」の日本語版が6月21日に報じると、日本の衛生関係者からもツイッターで注意喚起が行われた。
粉ミルクについては、食中毒予防のため、70度以上のお湯で溶かす必要があり、すぐに飲めるようにと、ぬるま湯で溶かすのは危険だと、管理栄養士がツイッターで訴えた。
この投稿は、4万件以上も「いいね」が付いており、次々にリツイートされて関心を集めている。
新潟大学医学部小児科学教室も21年6月、ツイッターで「日本製は(サカザキ菌が)かなり少ないですが、製造工程上ゼロにはできないそうです」とし、70度以上のお湯で殺菌して冷ましてから飲ませるよう呼びかけていた。
■2時間以内に使用しなかったミルクは廃棄も原則
70度以上のお湯で粉ミルクを溶かすという原則については、WHOと国連食糧農業機関(FAO)が、サカザキ菌などの危険性を確認したとして、2007年に公表した調乳方法などのガイドラインの中で定めている。ガイドラインでは、調乳後は2時間以内に使用し、そうしなかったミルクは廃棄することも定めた。
厚労省も同年6月にこのガイドラインをサイト上で紹介して、国内でも70度以上などを調乳の基準にしている。
同省の食品監視安全課は6月23日、J-CASTニュースの取材に対し、現在の状況についてこう答えた。
「お湯を70度以上に保って調乳する、2時間以内に使用しなかったミルクは廃棄する、という2点については、今も変わりはありません。ぬるま湯は、70度以上には当てはまりませんね。粉ミルクのメーカーも、このように調乳の説明をしていると考えています」
同課によると、粉ミルクによる食中毒は、1996年以降は現在までデータベース上で報告は上がってきていない。サカザキ菌による食中毒についても、同様だとしている。