魚介類に寄生する「アニサキス」による食中毒が相次ぐ中、瞬間的に電気を流すことでアニサキスを殺虫する世界で初めての技術を熊本大学が開発しました。
体長2、3センチほどのアニサキスの幼虫は、サバやアジなどの魚介類に寄生し、加熱や冷凍をせずに、生きたままヒトの体内に入ると胃や腸などに刺さり、激しい痛みやおう吐を引き起こします。
去年1年間に厚生労働省に報告されたアニサキスによる食中毒は344件と、食中毒の発生件数としては1位で、近年増加傾向にあると指摘されています。
こうした中、熊本大学は、電気エネルギーを使ってアニサキスを殺虫する世界で初めての技術を開発しました。
1万5千ボルトの電圧を100万分1秒、魚に打ち込み、この処理を数百回繰り返すことで、寄生するアニサキスを感電死させることができるということです。
一方、うまみ成分や弾力などは処理前のものとほとんど差がなく、安全性についても問題はないということです。
熊本大学とともに共同研究をしている福岡市の水産加工会社は、このパルス処理をしたアジを三枚におろした商品を試験的に販売していて、2025年には機械の大型化を目指すとしています。
開発をした熊本大学産業ナノマテリアル研究所の浪平隆男准教授は「生の魚にはアニサキスのリスクがあるのが現状だ。水産業や寄生虫学など関係者の協力を得て今回開発した機械を普及させ、安心安全な刺身を後世や海外にも提供できるようにしたい」と話しています。