7月3日に放送された『坂上&指原のつぶれない店』(TBS系)に批判が集まっている。
この日放送されたのは「芸能人の知らない『日本一』の駅ナカの店」というテーマで、駅ナカや駅ビルにある人気店を紹介する内容。問題とされたのは、番組終盤で紹介された、大阪駅地下街にある居酒屋のメニューだった。
「お店の名物として紹介されたのがジビエ料理でした。レポーターの石原良純とU字工事が『シカもも肉の刺身』を注文。肉の表面を湯がいただけで、なかは生の状態の刺身が出てくると、2人は『柔らかい、うまい』『クセがない』と絶賛していました。
画面には『鳥取の猟師から直接仕入れた新鮮なシカ肉』というテロップが入っており、店のメニューには『シカ肉のタタキ』『シカ肉のユッケ』などの文字も確認できました」(テレビウオッチャー)
これに即座に反応したのが、SNSだった。
《ジビエで刺身って……食中毒おこしたいのかな?》
《獣医師です。ジビエなんか生食=死と思ってください》
《ジビエの生食ほど恐ろしいものはありません。公共の電波で放送しないでもらいたいものです…》
「食の安全」に関する情報を伝え続けている科学ジャーナリストの松永和紀氏が解説する。
「ジビエ肉の生食は、腸管出血性大腸菌、E型肝炎、サルモネラ属菌、寄生虫などにより食中毒となる可能性があり、死亡するリスクもあります。
腸管出血性大腸菌の食中毒は2011年、牛肉のユッケにより5人が死亡した事件が有名ですが、腸管出血性大腸菌は普通に土壌中などにもいるので、ジビエの肉も当然、菌がついている可能性があります。
番組で紹介された店は、『マタギ直送』という触れ込みで新鮮さをアピールしているようですが、新鮮だから食中毒のリスクがないわけではない。
腸管出血性大腸菌は、わずかな菌数で発症することがわかっています。菌は、肉の表面から内部に入り込んでいくため、表面をゆがくだけでは完全な殺菌は無理です。
E型肝炎は、シカ肉の刺身を食べて感染した事例があります。肉のなかの血液にいるウイルスが感染源となって食中毒が発生したと指摘されており、やはり『表面加熱』では、肉内部のウイルスの不活化はできません。
ジビエの肉を生で食べるというのは、微生物の食中毒について少し詳しい人であれば、震え上がるくらい怖いことなのです」
そのうえで、こう指摘する。
「テレビ番組制作側の責任も大きい。ジビエの生食の危険は、これまで繰り返しSNS等で指摘されており、インターネットで少し検索するだけで情報が大量に出てきます。そんな常識すら持たずにとりあげるのは、あまりにも自覚に欠けています」(松永氏)
大分の猟師で、ジビエを販売している「田舎ハンターりょう」氏は、自身のTwitterにこう投稿している。
《ジビエを発信してくれるのはいいけど、刺身はあかん》
《豚を生で食べないのと同じで、ジビエが危険なのでは無く調理法に問題があるだけです。適切に加熱(低温調理含む)されたジビエはとても美味しく栄養価も高いお肉です》
せっかく日本でも広まりつつあるジビエ文化も、一部の無責任な行動で問題が起きれば、水泡に帰すことになりかねない。