新型コロナの患者の病床が各地でひっ迫するなか、地域の拠点病院では入院の調整が難しくなり、救急外来で患者に待機してもらうケースも出てきています。
現場の医師は診療が遅れ症状が悪化するおそれもあるなどとして危機感を募らせています。
各地で病床使用率が上昇するなか、神奈川県の使用率は70%を超えていて、川崎市の新百合ヶ丘総合病院では34床あるコロナの専用病床は満床の状態が続いています。
救急センターでは今週に入ってから患者が搬送されてきても院内だけでなく県内のほかの病院との間でも病床の調整が難しくなっていることから、本来は使わない救急外来の病床で患者に待機してもらう状態が続いています。
病院によると、今月25日には40件以上受け入れを断られ、呼吸困難の症状で搬送されてきた80代の女性が転院先が決まるまで24時間近くかかるケースがあったほか、28日朝に搬送された80代の女性も転院先が決まらず待機が続いているということです。
病院では特に高齢者は食事が取れず衰弱するおそれもあるとして、できるだけ入院してもらう対応をとっていましたが、今月初旬以降は自宅に帰宅してもらうケースも増えてきていて、持病が悪化したり肺炎を起こしたりして再入院した場合に入院が長引くことなどが懸念されているということです。
神奈川県の救急搬送についてアドバイザーを務める伊藤敏孝救急センター長は「医療従事者の感染で人手が足りず、病床が空いていても実際には受け入れていないためベッドの争奪戦が起きている。救急外来での対応は第6波でもなかったことだ」と危機感を募らせています。
そのうえで伊藤センター長は「若くて軽症の人がどこに電話していいか分からず救急車を呼ぶことで救急外来に運ばれるコロナの患者が増えているが、重症化のリスクがある人の診療が遅れてしまうので、軽症の人は少し待って様子を見てほしい。急に息苦しさや胸の痛みを感じるなどした場合にはすぐに救急車を呼んでほしい」と話していました。