2022/09/08【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナ「高い感染レベル続くも着実に減少」専門家会合
新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、新規感染者数は全国的に高い感染レベルが続いているものの、着実に減少していると分析しました。一方で、学校再開による影響などで増加に転じる可能性もあるとして感染対策を続けるよう求めました。
専門家会合は、現在の感染状況について、全国的にはことし2月の第6波のピークよりも高い感染レベルが続いているものの、感染者数は着実に減少していると分析しました。
そして、大都市での短期的な予測などから、多くの地域で減少傾向が続く可能性があるとする一方で、北日本を中心に感染者数の減少が鈍化する傾向がみられるなど、学校再開などの影響で増加に転じる可能性があると指摘しました。
療養者数の減少に伴って、医療体制は一般医療を含めて負荷が続いているものの状況の改善が見られているとしています。
また、重症者数も直近では減少に転じ、亡くなる人の数は増加傾向が収まって高止まり状態になっているものの、これまで最も多かった時期を超える状況が続いているとしています。
こうしたことを踏まえ、いま求められる対策について専門家会合は、症状のある人がみずから検査を行い、陽性の場合、症状の悪化に備えて健康観察を受けられる体制や臨時の医療施設の整備など、医療体制のひっ迫を避けることが必要だと指摘しています。
さらにオミクロン株対応のワクチンについて、来月半ばをめどに接種を始めることを想定して準備を行うほか、3回目や4回目の接種も促進していくことが必要だとしています。
また、不織布マスクの正しい着用や消毒、換気の徹底やのどの痛みやせきなどの症状があるときは外出を控えることなど基本的な感染対策を徹底して感染リスクを伴う接触機会を可能なかぎり減らすよう呼びかけました。
■1週間の新規感染者数 全国では前週の0.69倍
厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、6日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて0.69倍と減少傾向が続いています。
首都圏の1都3県では、
▼東京都が0.66倍、
▼神奈川県が0.71倍、
▼埼玉県が0.73倍、
▼千葉県が0.75倍と減少傾向が続いています。
関西では
▼大阪府が0.66倍、
▼兵庫県が0.68倍、
▼京都府が0.72倍、
東海でも
▼愛知県が0.71倍、
▼岐阜県が0.73倍、
▼三重県が0.70倍と先週から減少が続き、すべての都道府県で前の週より減少しました。
人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、
▼鹿児島県が1035.85人と全国で唯一1000人を超え、
次いで
▼徳島県が997.42人、
▼宮崎県が972.63人、
▼長崎県が966.31人、
▼高知県が899.02人となっているほか、
▼大阪府が757.34人、
▼東京都は578.53人、
▼全国では681.26人となっています。
■感染後何日間ウイルスが検出されるかのデータも紹介
専門家会合では、新型コロナウイルスに感染した人から、何日間にわたってウイルスが検出されるのか調べた国内や海外のデータが、複数、紹介されました。
国立感染症研究所の鈴木忠樹感染病理部長が提出した資料では、オミクロン株の「BA.1」が広がり始めていた去年11月からことし1月にかけて行った調査のデータが示されました。
調査では感染して症状が出た59人でウイルス量を調べたところ、発症した日を「0日」とした場合、7日から13日目までのウイルス量は、発症した日から3日目までの量のおよそ6分の1に減少していたということで、感染から7日後以降でもウイルスは排出しているものの、感染を広げるリスクは低下していると考えられるとしています。
また、発症した57人を対象に、何日目までウイルスが検出されるか調べたところ、ウイルスが検出された人の割合は発症した日を「0日」として、1日目は96.3%、2日目は87.1%などとなり、7日目で23.9%、8日目で16%、9日目で10.2%、10日目で6.2%と、低下していたということです。
一方、無症状だった26人ではウイルスが検出された人の割合は
▽4日から5日目は80%、
▽6日から7日目は12.5%、
▽8日目以降は0%だったということです。
このほか、京都大学の西浦博教授はアメリカのハーバード大学などのグループによる研究で、発症から5日目では半分以上の人でウイルスが検出され、8日目では25%の人で検出されたとする結果など、発症から一定期間を経た後でも感染を広げる可能性があるとするデータを紹介しました。
■専門家の有志が療養期間の短縮などについて提言
7日行われた厚生労働省の専門家会合では、脇田隆字座長ら専門家の有志が、療養期間の短縮などについての意見をまとめた提言を示しました。
この中では、患者の療養期間を現在の10日間から7日間に短縮することについて、
▽症状が出てから10日目までは感染リスクが残るが、発症後7日間が最も感染性が高いことが分かっているほか、
▽医療や社会機能を維持することが必要なことも短縮が必要な理由になるとしています。
ただ、
▽症状が続いている場合は10日間の待機とすること、
▽療養期間が短くなった場合も10日目までは感染リスクが残るため外出する場合は感染対策を実施すること
▽医療従事者や高齢者施設のスタッフなど重症化リスクの高い人に接する場合は復帰の前に検査で陰性を確認することが求められるとしています。
また、入院が必要な患者が高齢者施設へ移ったり、医療機関の中での隔離を解除したりするのは、発症から10日間がたってからにする必要があるとしています。
さらに、無症状の感染者については最初の検査で陽性が確認されてから5日目に、抗原検査キットで陰性が確認された場合は療養を解除することが可能だとしています。
一方で、提言の中では、こうした考え方について専門家の中から「リスク評価に基づいた検討ができていないため同意できない」という意見があったとも記しています。
■脇田座長「完全に安心できるような状況ではない」
厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は、今の国内の感染状況について「全国的には感染者の減少傾向が続いていて、今後も継続する可能性があるが、一部の地域では、減少速度の鈍化が見られ、まだ完全に安心できるような状況ではないという評価だ。今は8月の終わりから9月の初めの学校再開の影響が今後出てくるかどうかをしっかりと見ていくことが重要だと思っている」と述べ、ピークを越えたかどうか慎重に見守る必要があるとする見方を示しました。
さらに「これからは、海外と日本でほぼタイムラグがなく新しい変異株が流入してくる可能性が高い。いつ来るかはわからないが、冬に向けていわゆる第8波が来る可能性が高く、これまで以上の感染拡大を想定して対策をしなければ、医療のひっ迫が必ず起きてしまうという議論があった。今後も流行状況の見通しやリスクの評価をアドバイザリーボードで伝えていく」と述べました。
また、自宅などでの療養期間の短縮について「おおむね容認できるのではないかという意見が複数あった一方で、リスクがきちんと対策に反映されていないという意見もあった。また個人が主体的にリスクを低減するために、どういう行動をしたらいいかをわかりやすく周知することが必要ではないかという意見や、高齢者が多い医療機関や高齢者施設は、従来の10日間をしっかり守るべきではないかという意見もあった」と専門家の間でも議論になったと述べました。
そして「療養期間を今の10日から短縮するならば、一定程度、リスクが残存する。その状況で、自由に行動すれば感染を広げるリスクがあり、感染の減少速度が遅くなるといった傾向が出る可能性はあるだろう。そうしたリスクを認識して対策をしてもらう必要がある」との考えを示しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220907/k10013808311000.html?fbclid=IwAR1UpYxttN96L8NDCDz-DrSep9vLVKlmFu6aBhc5KBz40aIJ06T_NlSl5vc