2020/01/29【新型コロナウイルス】奈良県のバス運転手感染 専門家「調査対象広げる必要ある」
武漢への渡航歴がない日本人男性で、新型のコロナウイルスへの感染が確認されたことについて、専門家は「感染のリスクがある地域から来ている人と数時間、同じ空間にいた人を調べるなど感染の広がりを防ぐために、調べる対象を広げる必要がある」と指摘しています。
28日、新型コロナウイルスの感染が確認された奈良県に住むバス運転手の日本人男性は、武漢に滞在歴はなく、バスに乗っていた武漢からのツアー客も症状は出ていなかったとされています。
国は、武漢の滞在歴がある人や武漢からの肺炎患者と濃厚に接触した人については、発熱などの症状が出た場合、医療機関に報告するよう求めていますが、奈良県の男性はこの報告の対象ではなく、厚生労働省は報告対象の拡大を検討したいとしています。
これについて感染症の予防対策に詳しい東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「男性を診察した医師が新型コロナウイルスへの感染の可能性を疑って診断したことは、感染拡大のリスクを抑える意味で適切な対応だったと評価できる」と話しています。
そのうえで、2003年に感染が拡大したSARSでは、車内などの閉鎖空間で感染するリスクが指摘されているとして、「今回のウイルスも直接的な接触はなくても感染する可能性がある。広がりを防ぐためには感染のリスクがある地域から来ている人と長い時間行動をともにしたケースなどにも、調べる対象を広げる必要がある」と指摘しています。
今後求められる対策について、「新型のコロナウイルスがすでに広がったという前提で対策を考えることが重要だ。手洗いや消毒で感染を抑制できると考えられ、感染しても全員が重症化するわけではないので、必要以上に恐れず、冷静に対応していくべきだ」と話しています。
感染のバス運転手 奈良公園立ち寄るも降車せず
奈良県は、感染が確認されたバス運転手の男性が中国の武漢からのツアー客を乗せ今月16日に奈良公園に立ち寄っていたことを明らかにしました。
この際、客はバスから降りたものの男性は乗ったままだったということです。奈良県は県内に住む60代の男性が新型のコロナウイルスに感染していると確認されたことを受け、29日午前、県庁で対策本部の会議を開きました。
この中で荒井知事は「感染が広がらないよう万全を期したい」と述べたうえで、感染が確認されたバス運転手の男性が中国の武漢からのツアー客を乗せ今月16日に奈良公園に立ち寄ったことを明らかにしました。
バスは今月12日に成田空港を出発し、国内を観光しながら関西空港に向かう途中で、奈良公園内の駐車場に1時間ほど駐車し、客はバスから降りたものの男性は乗ったままだったということです。
男性は今月22日にも別の中国の都市からのツアー客を乗せて奈良公園に1時間ほど立ち寄りましたが、このときもバスから降りなかったということです。
県内での立ち寄り先を明らかにした理由について奈良県は「不正確な情報が出回り風評被害などが起こるおそれがあるため、伝えることにした」と説明しています。
一方、県外で立ち寄った場所を公表するかどうかは該当する自治体の判断に任せたいとしてそれぞれの自治体に情報提供することにしています。
厚労相 104人接触も現時点で発症なし
また、加藤厚生労働大臣は参議院予算委員会で、現時点で104人が接触していることを明らかにしました。安倍総理大臣は武漢から帰国した人たちの健康面のケアに万全を期すなど感染拡大の防止に全力を尽くす考えを示しました。
この中で加藤厚生労働大臣は湖北省・武漢への渡航歴がない奈良県に住む日本人男性が新型コロナウイルスに感染しているのが確認されたことについて「国内で人から人への感染が疑われる初めての事例であり、これまでとは事象が違っているという認識で対応しなければならない」と述べました。
そのうえで加藤大臣はこの男性が感染が疑われる期間に接触した場所などを調査した結果、接触した人はこれまでに104人で、そのうち18人が家族や医療関係者などの濃厚接触者であるとする一方、現時点では発症している状況ではないことを明らかにしました。
また安倍総理大臣は29日午前、チャーター機で武漢から帰国した人たちについて「感染症指定医療機関においてウイルス検査の実施も含め、一人一人の健康状態をしっかりと確認するなど帰国者の健康面でのケアに万全を期していく」と述べました。
そして、引き続き希望者全員の帰国に向け、あらゆる手段をとるとともにウイルスの感染拡大の防止に全力を尽す考えを示しました。
https://www3.nhk.or.jp/n…/html/20200129/k10012263491000.html