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- 2020/02/11【新型コロナウイルス】新型コロナ「エアロゾル感染を確認。要するに空気感染」は誤り。ネットで不安と誤解が拡散
2020/02/11【新型コロナウイルス】新型コロナ「エアロゾル感染を確認。要するに空気感染」は誤り。ネットで不安と誤解が拡散
新型コロナウイルスをめぐり、「エアロゾル感染が確認された。要するに空気感染」という情報がネット上に広がっている。こうした情報は過度に不安を煽るものであり、「誤り」だ。BuzzFeed Newsは神戸大学教授で感染症の専門家、岩田健太郎医師の協力を得て、ファクトチェックを実施した
ネット上に拡散しているのは、中国が公式に新型コロナウイルスの「エアロゾル感染を確認した」として、「要するに空気感染」などとする情報だ。
BBCの中国語版や新華社通信がエアロゾル感染の「可能性」を報じたものがネット上に広がり、まとめサイトなどにも転載されることで、人々の不安を煽っている状況になっている。
なかでも、まとめサイト「アノニマスポスト」の【エアロゾル感染を確認 中国保健部~ネットの反応「要するに空気感染だよね」】という記事は2700以上リツイートされるなど拡散。
記事では「エアロゾル感染=空気感染です」「要するに人混みの中には行くなよって事」などというネット上のコメントをまとめている。
また、Twitter上でも、こうした情報に触れながら「ジェットタオルを使わないで!」「長時間空中に漂って感染する可能性がある」といった反応のほか、与野党の国会議員までも反応している。
たとえば、国民民主党の原口一博衆議院議員が「エアロゾル感染」を「Airborne infection」(空気感染)とツイートし、「安倍政権が前提としている対策を根本から見直す必要が」と指摘。自民党の佐藤正久参議院議員も武漢の簡易病院施設では「感染を防げないことになる」などとツイートしている。
そもそも「エアロゾル感染」って…?
前提として、「エアロゾル感染が空気感染」という指摘は「誤り」だ。
そもそもいわゆる空気感染とは病原体の特徴で、空気中にウイルスなどが長時間漂うことで感染が広がることを指す。こうした経路を通じて感染するのは、麻疹、水痘、結核などだ。
では、エアロゾル感染はどうか。岩田医師はBuzzFeed Newsの取材に「一意的な定義はないと理解しています」としたうえで、「この件の文脈で言うならば、病原体を含む液体が霧やガスのような状態で空中を広がることと理解すればよいでしょう。一過性の発生が特徴です」と指摘した。
咳やくしゃみなどによって感染が広がる「飛沫感染」よりは感染の範囲が広がるとはいえ、恒常的に感染の広がりが認められるものではないため、「空気感染」とはまったくの別物なのだ。
「新型コロナウイルスについては、報道では『可能性』が言及されているだけで、エアロゾル感染は確認はされていません」
そう語る岩田医師はエアロゾル感染は「一過性、偶発性、そして稀有な事象」だと強調し、過去の事例を挙げた。
・SARSのときのように水洗トイレの水洗で便器からエアロゾルが発生(アパートの上下階のトイレなど)
・ノロウイルスで吐瀉により絨毯などに吐瀉物(嘔吐や下痢)が散布、このときにエアロゾルが発生
・結核患者と知らずに死亡者を病理解剖していて、メスなどで切るときにエアロゾルが発生、病理学者の二次感染事例として有名
「満員電車で感染拡大」も不適切
「エアロゾルは一過性のもので、麻疹のように継続的な感染を成立させません。しかも、そのエアロゾルの発生自体がある程度、偶然に左右されます」
「クルーズ内で感染が流行しやすいのも密閉空間で『日』の単位で空間を共有するからです。満員電車による感染拡大を指摘する声もありましたが、満員電車に数日こもる人はいないので、よってこのアナロジー(類推)は不適切です」
岩田医師は、医療体制の不足を指摘する声に対しても「現在の指定感染症防護体制は空気感染対応バージョンなのでエアロゾルが出てもまったく関係ありません」と一刀両断した。
また、ネット上に広がっている「電車内で他人の体臭を感じるくらいの近さはダメ」「人混みを避ける」「ジェットタオルを避ける」などの情報についても、こう述べた。
「体臭は関係ないです。人混みもエアロゾルが発生していなければ関係ないですし、普通の飛沫感染も人混みで感染できますから、そこはポイントではありません」
「ジェットタオルがエアロゾルを発生させる可能性はあると思います。が、これもウイルスを持っている人がたまたまトイレで手に咳をして、用を足したあとろくに手を洗わず、しかし水滴はたくさんつけてジェットタオル使う、という偶然の重なりが必要です。おそらくは通常の(武漢で起きている)コロナウイルス感染の感染形態としては例外中の例外と言えましょう」
そもそも「エアロゾルの発生」は滅多にないことであり、予防策は、飛沫感染に対する「手洗い」「うがい」「アルコール消毒」などと一緒だ。岩田医師も「一般の方も特別にすることはありません」という。
そのうえで今後「空気感染が起こる可能性はありません」とも指摘。「起こっていることと、起こりうること。一般的なことと、例外的なこと。恒常的なことと、偶発的なことは常に区別すべきです」と注意を呼びかけた。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200210-00010009-bfj-sci