感染症対策のポイントと考え方
- 2017/7/3
- 感染症ガイド
感染症対策のポイントと考え方
感染症.comがこれまで支援してきた中で、気付いた感染症対策、食中毒対策、衛生管理を実施する上でのポイントです。
感染症対策の7つのポイント
1)指針を決めましょう!
まず、何の目的で何を対策したいのか?どんなリスクがあるのか?などを出来るだけ明確にし、どれレベルまで対策を行うのか、法人や事業所、施設において指針を決めます。
ただやみくもに「感染症対策を頑張ろう」では、個人差が出ます。また、感染症対策はベストを尽くすと、極端な話、誰とも接しない、社会と交わらないといった潔癖のような状況に陥ります。
事業におけるリスクの理解 ⇒ 具体的な目標の設定 ⇒ 具体的な実施レベルの設定
2)管理体制を確立しましょう!
感染症対策、食中毒対策、衛生管理はチームワークが必要不可欠です。
法人・事業所・施設の指針に基づいた対策を実施するにあたり、マニュアルの整備、職員の研修、委員会の設置、役割分担、実施状況の監査、職員の健康管理、行政への報告などの体制を確立しましょう。
特に集団感染の予兆を感じたら、拡大防止策にシフトチェンジします。一刻も早く収束させるためにはチームワークは絶対に必要なのです。
食品においても同様です。HACCPシステムはリスク要因を明確にし、重点管理項目としてチェックしていきます。事故や問題が発生した際に、問題の箇所の分析に役立ちます。
マニュアルの整備、職員の研修、委員会の設置、役割分担、実施状況の監査、職員の健康管理、
各種検査、環境衛生(洗浄・消毒)、HACCPシステムの整備 など
3)事故は起こることを認識しましょう!
予防は100%に近づけることは出来ても100%にはなりません。つまり、感染事故や食中毒事故は起こりえます。
ですので、事故を予防することが大前提ですが、集団感染事故の予兆や発生した際の対応方法として、拡大防止策や体制のシフト変更についても準備しておく必要があります。
また、感染事故や食中毒事故の経験が無いことによる過信や慢心が無いようにすることも非常に重要です。
病原微生物は見えません。見えない敵と戦っていることを認識しましょう
4)適切な知識を身につけ、判断材料を増やしましょう!
数千人以上の職員を研修してきた経験から判断すると、ほとんどの方が間違った知識や古い知識で、現場の衛生管理を実施されております。そのことにより、マニュアル自体も誤った情報になっております。
適切な知識を身につけることは、現場での判断材料に役立ちます。もし間違った知識で判断をした場合、その判断も間違ったものになります。ですので、適切な知識を身につけなければなりません。
感染症対策は、食中毒対策や衛生管理なども含め、非常に広範囲で奥の深い知識が必要になります。インターネット上にもたくさんの情報が存在しますが、残念なことにその情報自体が適切でない場合も多く存在します。
適切な知識を身につけることは、現場での適切な判断材料となります
5)衛生用品は適切なものを選び、確実に実施しましょう!
感染症対策、食中毒対策、衛生管理は、適切な知識だけでは不十分です。なぜなら感染源となる病原微生物を洗浄・消毒し、感染経路を遮断しなければならないからです。
例えば、ノロウイルスはアルコールによる消毒の効果は期待できません。ですが、このことを知らずに嘔吐物などを処理していれば集団感染へとつながります。
また、清掃用具も感染症対策の観点からみた使用方法を決めなければなりません。例えば、モップで床を洗浄する際にバケツで濯ぎながらモップを使用することは、感染症対策上では不適切です。なぜならバケツの水は濯いでいく内に汚染されていくからです。
適切な衛生用品の選択と、適切な使用方法を決め、確実に実施しましょう
6)職場だけでなく家庭内感染対策も行いましょう!
事業所・施設内での院内感染や職場内感染のきっかけの多くは、職員や来訪者による持ち込みです。
職員による持ち込みを防ぐには、家庭内の感染対策が重要です。子どもがノロウイルスに感染して発症すると、ほぼ家族全員が感染するケースが多いです。調理職員が感染していることに気付かずに給食を作れば集団食中毒へとつながる場合があります。インフルエンザなども同様です。
職場内で感染が拡がることで、業務がまわらなくなることも想定され、大規模となれば経済が停滞します。新型インフルエンザ対策が騒がれるのはこういった理由からです。
家庭内感染対策が、感染症対策の基本です
7)過信と慢心が一番の大敵!常日頃の心がけを忘れずに!
「今まで起きなかったから」「起きてもそんなに被害が無かったから、少々起きても大丈夫」という考えが一番危険です。それはただ運が良かっただけに過ぎません。そういった事業所や施設に限ってルールもなく、管理も当然出来ていません。衛生管理は基本中の基本として捉え、こういった基本を徹底出来ている職員は例外なく他の業務にも気配り心配りが出来ているものです。
ポイント1~6での内容をふまえ、常日頃の心がけを忘れないでください。朝礼の際や、週に1度組織で確認し合うなどのチェックも非常に重要です。
事業所や施設外での生活についても、季節と場所に合わせて必要な対策を認識しておき、自身が集団感染の原因にならぬよう注意をしましょう。当然ながら、外来の方や来社される取引業者の方々にも、ご協力頂くことも重要です。
過信と慢心によって、集団感染や集団食中毒は発生します
感染症対策の考え方
感染症対策、食中毒対策、衛生管理は、頑張りすぎると業務が出来なくなります。なぜなら、潔癖を求めなければなりません。業務を円滑に進めながらも適切な対応をしていくには、感染症対策の考え方が重要です。
感染症.comでは、これまで実施してきた経験から下記のような考え方に行きつきました。
リスクを理解したうえで、今できるベターな選択をする
ベストではなく、ベターです。ベストは最高を求めなければなりません。しかしベターは、AとBとCのうちどれが良いかといった考え方です。今できるベター選択肢を状況に応じて判断をしていくのです。
例えば交通ルールでも同じことが言えます。車線に停車している車を追い越す際に、「反対車線にはみ出してはならない」というルールを守れば追い越せません。また追い越すにあたり、対向車の有無や停車中の車がドアを開けないかなど、あらゆるリスクを想定して判断をしていきます。感染症対策でも同様なのです。