ウイルスについて
- 2017/7/3
- 感染症ガイド
ウイルスについて
ウイルスは、インフルエンザウイルスやノロウイルス、風邪などの一般的なものからエボラウイルスや免疫不全ウイルス(HIV)など、危険なものまで様々存在します。
よく細菌と混同されている方が多いですが、ウイルスと細菌では生物としてまったく異なります。また、厳密にはそもそもウイルスは生物ではなく、非生物と分類されております。
それと、表記上の定義ですが、ウイルスとウィルスでは意味が異なります。「イ」を小文字にする場合は、「コンピューターウィルス」を意味し、ウイルスとの使い分けをしております。
1)ウイルスは生物学上では非生物
ウイルスは、遺伝子を持ち、他の生物の細胞を利用して増殖するなどの生物の特徴も持っておりますが、細胞質・細胞膜・細胞壁・核などの細胞構造がなく生物学上は非生物に分類されます。
2)特定の受容体(レセプター)に吸着・侵入します
細菌は適当な栄養条件と環境が整えば自己増殖できますが、ウイルスはエネルギーの産生や蛋白質の合成などの機能が無く、生きた細胞表面の特異的な受容体(レセプター)に吸着、侵入し、複製を繰り返すことで増殖します。
それゆえ、取扱いが面倒であり、実験的には感受性細胞の維持継代、ウイルスの特性に応じた取扱い等、設備面も含め、とっつきにくい分野です。その大きさは極めて小さく、細胞濾過器に通しても動物に病原性を示すので、細菌とは異なる病原体であると認識され、濾過性病原体と命名されました。
その後、細胞培養技術が進歩を遂げ、ウイルスによる細胞死が顕微鏡で観察できるようになり、ウイルスの存在が明らかになりました。さらに、電子顕微鏡による観察から粒子の大きさ、形態等も確認されました。
最近では細胞死を示さないレトロウイルスや、臓器特異性が強い肝炎ウイルス、例えばC型肝炎ウイルス(HCV)、及びノロウイルスといった胃腸炎ウイルス等、様々なウイルスが遺伝子レベルで検出可能となりました。しかし、一方では培養細胞での増殖実験に成功していない厄介な病原ウイルスが蔓延しており、世界各地で感染症が猛威を振るっているのが現状です。
3)ウイルスの脅威
高病原性鳥インフルエンザウイルスの人間社会への順応が危惧され、伝染力が強く、死亡率が高いスペイン風邪(1918年にスペインから起こり、世界各地に広まったインフルエンザで、2,000~4,000万人を死に至らしめました。)の再来が人類の大いなる不安要因となっております。
さらに地球温暖化にともない、蚊が媒介する熱帯性伝染病であるデング熱ウイルス、ジカウイルス、マラリア原虫感染症が感染地域を拡大することも懸念されております。