2020/07/03【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナ「クラスター」27人感染の病院 なぜ広がったのか
新型コロナウイルスの「クラスター」が発生し、医師や患者など27人が感染した北九州市の北九州総合病院。なぜ院内感染がここまで広がったのか。
病院によりますと、5月22日に80代の男性患者が救急搬送されてきました。男性は突然、呼吸が苦しくなったと訴え、肺から空気がもれる気胸だと分かりましたが、発熱はなく、CT検査を行っても新型コロナウイルスを疑う症状は確認できませんでした。
北九州市では当時、市中感染は確認されておらず、男性はその後、ほかの患者と相部屋のICUに入院しました。そして肺の手術を行うことになり、病院は念のため、PCR検査を実施することを決め、検体を採取しました。
しかし、すぐには結果が出ず、陽性が判明したのは検体を採取してから2日後。すでに手術が行われた後でした。
病院はICUで男性患者の対応にあたった医師や看護師、それに男性と同室だった患者など濃厚接触者167人にPCR検査を実施。すると次々に感染が確認されました。
感染が確認されたのは
▽医師が5人
▽看護師が10人
▽放射線技師が6人
▽リハビリテーションスタッフが1人
▽患者が、男性を含めて5人です。
いずれもその時、症状はありませんでした。
感染した医師は「患者には新型コロナウイルスの感染を疑う症状が全くなかったので、驚きました。自分の感染がわかって恐ろしくなったのと、誰かにうつしたのではと考えるとゾッとしました。分からないことが多く本当に怖い病気です」と話しています。
病院は外来や入院などの診療を制限し、院内を消毒するとともに感染防止対策の見直しを迫られました。
経緯を検証した結果、感染者と気付かずに対応にあたったことが院内感染のきっかけになったと考えました。
このため救急搬送されてきた人や発熱外来の受診者、それに新たに入院する患者について全員にウイルス検査を実施することにしたのです。
対策を実施した結果、6月1日を最後に新たな感染者は出ず、6月中旬から救急や外来などの診療を再開しました。
北九州総合病院の永田直幹病院長は「新型コロナの症状が全く無くても感染している人がいるのがこの病気の怖いところ。気付かないまま院内にウイルスが持ち込まれたことが、クラスターにつながった。こうした持ち込まれケースをいかに防ぐかが、感染対策の鍵になると感じた」と話しています。
患者全員に抗原検査で再発防止図る
北九州総合病院では、院内感染を教訓に、入院や救急搬送の患者全員に抗原検査を実施することで再発防止を図っています。
院内感染のきっかけは新型コロナウイルスを疑う症状がみられなかった患者が病院に救急搬送されてきたことがきっかけでした。
このため病院は救急搬送されてくる患者や発熱外来を受診する患者全員に原則、抗原検査を実施し、入院する患者についても、1週間前から体温測定をしてもらい、入院当日に抗原検査を実施するようになりました。
抗原検査は綿棒で鼻の奥の検体を採取しキットを使っておよそ30分で結果が得られる簡易検査で、医師の裁量で実施することができます。検査を行った患者は5月29日からのおよそ1か月間に600人余りにのぼっています。
病院は、新型コロナウイルスを疑う症状の無い患者に対しても抗原検査を徹底することで、気付かないまま感染が広がることを食い止めていきたいとしています。
北九州総合病院の永田直幹病院長は「新型コロナウイルスとの闘いが続く中で、医療スタッフと患者の安全を第一に考えて医療を提供してくためには徹底的に検査を行っていくことが第一だと考えている」と話しています。