溶血性連鎖球菌 Streptococcus

溶血性連鎖球菌 Streptococcus


溶連菌感染症の原因細菌です。
A群β溶血性連鎖球菌(Group A Streptococcus:GAS A群溶連菌)

病原体について

正式には溶血性連鎖球菌と呼ばれる細菌で、α溶血とβ溶血の2種類があり、後者でヒトに病原性を有するものは、A群、B群、C群、G群などです。

溶連菌感染症の90%以上がA群によるものです。したがって、一般にはA群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)による感染症を溶連菌感染症として理解されているといってもよいでしょう。

特徴

主に「のど」に感染して、咽頭炎や扁桃炎、それに小さく紅い発疹を伴う猩紅熱といった病気を引き起こします。

溶連菌感染症が起こす症状

粘膜

咽頭炎、扁桃炎、猩紅熱、中耳炎、副鼻腔炎など

皮膚・軟部組織

伝染性膿痂疹、蜂窩織炎、丹毒など

その他

肺炎、菌血症、トキシックショック症候群など

子どもが「のどが痛い」という時、その大部分はウィルスや細菌に感染して「のど」に炎症を起こしている状態です。

その多くはウィルスによりますが、細菌では怖い続発症(合併症)を引き起こす溶連菌が重要で、この細菌による感染症(溶連菌感染症)はこどもに多い疾患です。

「のど」に感染する病原体は、風邪に関係するいろいろなウィルスや細菌があります。細菌では溶連菌が代表的ですが、ほかに肺炎球菌やインフルエンザ菌(インフルエンザとは関係ありません)といったものがあります。

潜伏期間と主な症状

A群β溶血性連鎖球菌咽頭炎は、潜伏期間は2~4日で、突然の発熱・のどの痛みで始まります。

のどは赤く腫れ、扁桃腺は膿を持っているように見えます。発熱、咽頭炎、扁桃炎、苺舌と菌が産出する外毒素による赤い発疹を認めるものを猩紅熱(しょうこうねつ)と言います。咽頭部の細菌検査でA群β溶血性連鎖球菌が確認された場合、有効な抗生物質を菌が消失するまで投与します。このことによって続発して起こる可能性のあるリウマチ熱や糸球体腎炎をさけることができます。

伝染性膿痂疹(とびひ)は、湿疹や引っかき傷などの小さな傷に菌が付着・侵入して感染します。

始めは、水疱・膿疱を形成し、次に破れて痂皮(かさぶた)となります。かゆみがある場合があり、かきこわしていると患部は急速に広がります。水疱の内容にもA群β溶血性連鎖球菌は存在するので、それが付着する恐れがある、タオルや下着は別にしたほうが良いです。痂皮(かさぶた)にもA群β溶血性連鎖球菌は存在するので、扱いに注意してください。治療には有効な抗生物質を用い、痂皮(かさぶた)がなくなるまで治療します。

劇症型は危険 侵襲性A群β溶血性連鎖球菌感染症

侵襲性A群β溶血性連鎖球菌感染症では、ショックや肝臓・腎臓等の臓器の働きが悪くなる臓器不全を起こしてしまうと、致命率が高くなります。

早期診断・早期治療が治癒率を高めます。A群β溶血性連鎖球菌が体の組織内に入り込むきっかけとなる、A群β溶血性連鎖球菌咽頭炎や創傷のA群β溶血性連鎖球菌による感染に対しては早めにきちんと医療機関で治療を受けましょう。

特に、抵抗力が少ない癌患者・糖尿病患者・腎臓透析患者・ステロイド使用の患者等は、特に注意が必要です。

抗生物質の投与

抗生物質を飲み始めると、2〜3日ほどで熱が下がり、のどの痛みもやわらいできます。

発疹が出た場合、急性期を過ぎて、手足の指先から始まる落屑(皮むけ)が認められるようになります。

確実に溶連菌を退治し、重大な続発症(合併症)を引き起こさないために、症状が消えても抗生物質はしばらく飲み続けなくてはいけません。一部の抗生物質以外は10日間飲み続ける必要があると言われています。

続発症(合併症)について

10日間お薬を飲み続けるのは、心臓弁膜に障害などを起こすリウマチ熱や、急性糸球体腎炎といった続発症(合併症)につながることもあります。

再発と家族への感染
溶連菌感染症は、繰り返しかかることもあります。大人になってもかかります。溶連菌は咳やくしゃみなどで近くの人に感染(飛沫感染)しますが、溶連菌に汚染された食品が原因の場合もあります。一人がかかったら家族、特に一緒に遊んでいる兄弟への感染に注意し、できれば一緒に検査を受けておく必要があります。

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