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- 2020/04/23【新型コロナウイルス:COVID-19】小児の新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制に関する見解 〜入院や付き添いの考え方も含めて〜 /日本小児科学会
2020/04/23【新型コロナウイルス:COVID-19】小児の新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制に関する見解 〜入院や付き添いの考え方も含めて〜 /日本小児科学会
成人患者における新型コロナウイルス感染症の疾病負荷は甚大であり、新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制は成人患者を中心に編成されている。そのため小児患者に対する体制整備は遅れており、小児患者が発生した場合には、病床管理に苦慮することが危惧されている。また、小児患者は多くの場合に全面的な介助が必要であり、行動の抑制が困難であることから、小児医療の現場では、医療従事者への感染伝播や院内感染のリスクが高い状況が発生すると考えられている。
一方で、これまでの知見により、小児患者は比較的軽症であることや、感染伝播についてもほとんどが保護者や同居家族からであって、小児を発端とした大規模な集団感染事例は国内では報告されていない。従って、小児の新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制の整備には成人と異なる考え方が必要であり、これらのことをふまえて、日本小児科学会としての見解を示す。
1.小児の軽症患者は原則として自宅療養を考慮する。
感染拡大防止を目的として入院した患者についても、速やかに自宅療養への移行が妥当と考える。自宅療養の実施には、毎日電話再診などによる状態の確認を前提とする。自宅に高齢者あるいはハイリスク者が同居しており、確実に距離を保って過ごすことができない場合では、担当医と保護者でよく相談する必要がある。同居家族が新型コロナウイルス感染症に罹患し、小児にも感染が疑われる症状が出た場合は、以下が考慮される。
1) 症状が軽症で、その後の同居家族以外の人との接触が避けられる場合は、検査診断は必ずしも必要ないこと。
2) 発熱の持続、呼吸器症状の悪化等がみられた場合は、速やかにかかりつけ医に電話で相談すること。
2.小児が入院した場合には、保護者の同室付き添いが考慮される。
保護者によるケアは小児の精神的な安定につながり、医療従事者の負担も大きく軽減される。さらに小児に基礎疾患がある場合や乳幼児においては、病態を最も理解し急変の徴候を早期に気付くことができるのも保護者である。保護者が小児の介護を可能な状態であると判断できた場合には、入院する小児の介護者として同室してもらうことには大きな意味がある。
また小児が発症した時点で、保護者は感染しているか、濃厚接触者であり同室での健康観察が必要である。なお保護者も病室から出られないため、検査結果にかかわらず食事を提供する等の柔軟な対応をとる必要がある。
3.小児の医療体制については、小児特有の課題もあり、行政機関のみでの調整は困難である。小児診療を行う医療機関が主体となり、保健所管轄を越え広域に連携し役割分担を決め、行政と協調して対応していく必要がある。
一次診療においては、院内感染を防止するために、地域の医師会や小児科医会が中心となり、検体採取作業の集約化も検討する。二次・三次医療圏においては、入院病床の調査を行い、特定の医療機関の負担が過大にならないように調整する。具体的には、最重症の新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関を決め、酸素投与が必要な中等症の入院症例を分散して診療するための複数の医療機関を確保する。一方で、新型コロナウイルス感染症以外の重篤な基礎疾患のある患者を集約して診療する医療機関や医療的ケア児を受け入れることが可能な医療機関などの確保も重要であり、役割分担を明確にする。
以上をもとに、小児と保護者の感染状況別にその対応についての考え方を表にまとめた。ただし、地域の感染状況や施設の人員確保、家族の状況ごとに、柔軟に対応していただきたい。
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