一口に「ウイルス」といっても様々なものがあるが、私たちを病気に陥れる悪の権化のようなイメージを持つ人が多いのではないだろうか?
Youtubeアカウント「ライフノギン」が、ウイルス自身は他のウイルスに感染することがないのか?といった素朴な疑問に答えている。その答えについて、ぜひ自身の予想を立てながらみていって欲しい。
病気になるのはサイアクだ。
しかし、それはあなたが「生きている」という証拠でもある。
植物、動物、そしてバクテリアに至るまで、地球上に存在にするすべての生命体は少なくとも1つのウイルスを保持している。
それでは、「生きていない」ものに関してはどうだろう?
厳密に言えばウイルスは、この「生きていないもの」に分類されるためにここで1つの疑問が生まれてくる。
「ウイルスはウイルスに感染することがあるのだろうか?」
実は、その答えは最近まで「No」だった。
ウイルスとは顕微鏡でも確認できないほどに微小なパラサイトであり、その大きさはバクテリア(細菌)の1/100以下であるとされる。
ウイルスには代謝作用がなく、転写や複製をおこなうためのタンパク質を持たないことから、それらは他の生物から生命維持機能を借りた「ゾンビ」同然の存在であるともいえる。
ウイルス単体では生命維持もできないのであれば、そこにウイルスが感染することなどありえないようにも思える。
しかし2000年代に入り、科学者たちは「生命とは何なのか?」といった問いに対する今までの常識を変える発見をすることとなった。
科学者たちは最初に「それ」を発見したとき、バクテリアだと信じてやまなかったが、後にそれが「巨大なウイルス」であったことが分かった。その大きさは、簡素な顕微鏡でも観察が可能なほどだ。
そしてその中には、一般的なウイルスよりも多くの遺伝子が含まれており、それらがタンパク質や代謝経路のみならず、DNAの複製機構さえもコードしていることが分かったのだ。
専門家はそれを“mimivirus”と名付けた。これには微生物をマネ(mimic)しているという意味が込められている。
ほどなくして、それを凌ぐ驚愕のニュースが流れた。
なんと、“mimivirus”の親戚ともいえる“mamavirus”が発見されたのだ。そして驚くべきことに、“mimi”よりもわずかに大きな“mama”は、その中に非常に小さなウイルスを隠し持っていることが分かったのだ。
わずか21の遺伝子で構成されるそのウイルスを“sputnik”と名付けられ、ウイルスに感染するウイルスとして史上初の例となった。
こうしたウイルスに寄生するウィルスは「ヴィロファージ」と呼ばれ、それ以来多くのヴィロファージが発見されたが、まだこのウイルスに関して分かっていないことは多い。
とはいえその基礎的な部分は似通っており、まず“sputnik”は、最初の宿主に寄生すると、アメーバの中にDNAを放出する。
“sputnik”はDNAを複製する機能を持たないため、その後“mamavirus”に寄生し、ここでも「第二の宿主」の中で遺伝物質を注入する。
そして、ひとたびこれが“mamavirus”の中にばら撒かれると、DNAは宿主の「ウイルス工場」をハイジャックして複製を開始し、最終的に“mamavirus”は、同様の行為をすることができなくなってしまうのだ。
ミクロの世界でこのような攻防戦がおこなわれているという事実は衝撃的だが、現在ではすでに、ヴィロファージが“mimivirus”や“mamavirus”だけでなく、他の多くのウイルスにも寄生することが分かっている。
さらに、昨年には“mimivirus”や“mamavirus”を超える、“pandoraviruses”と呼ばれる巨大なウイルスが発見されている。
非常に大きな“pandoraviruses”は、数千ものタンパク質をコードしており、そのうちの90%は地球上で“pandoraviruses”の中でしか観察できないものであるとのことだ。
また、こうした巨大なウイルスは、それ自身が遺伝子を作り出しているだけでなく、他の場所から遺伝物質を盗んできているとの可能性も指摘されている。
“sputnik”をはじめとしたヴィロファージは、その宿主と非常によく似た遺伝子を持っているため、専門家たちは巨大なウイルスが自らを守るために、宿主から遺伝物質を盗み出しているのではないかと考えているのだ。
もちろんこうした議論は、まだまだ定説と呼べるものではない。しかし、ウイルスが遺伝子を作り出して運搬できるといったこの考え方は、他の理論と重ねても合点がいくものであることが分かっている。
10億年以上も前に、DNAをベースとした巨大なウイルスが真核細胞に感染することで、初めて「細胞核」が作られたとする説が存在しているのだ。
結論としては、ヴィロファージのようなウイルスが巨大なウイルスに寄生することがあるため、ウイルスがウイルスに感染することは「ある」といえる。
しかし新たな発見によって、またもやこの事実が覆されることもあるかもしれない。できるだけ遠くの未来をその目でみるために、健康管理に留意してタチの悪いウイルスにだけは感染しないようにしたいものだ。
https://news.nicovideo.jp/watch/nw5264517?news_ref=60_60