2021/07/17【新型コロナウイルス:COVID-19】新型ウイルス感染対策、緩和した6カ国のその後 デルタ株やワクチン供給の影響は

英イングランドで段階的に緩和されてきた新型コロナウイルス対策の制限措置が、7月19日でほぼ全廃される。これは、社会的な交流に関するすべての法的制限の解除を意味する。
イングランドではこれまで、一部の公共スペースでのフェイスマスクの着用が義務付けられていたが、19日からは撤廃される。また、ナイトクラブの営業が再開され、一度に面会できる人数の制限も無くなる。
今年に入り、複数の国がすでに制限措置の緩和に取り組んでいる。ただ、その成果はまちまちだ。
では、すでに規制が緩和された国は、どのような状況になっているのだろうか。
イスラエル
ワクチンの接種スピードが速いイスラエルでは、2月に制限措置の解除が始まった。
国民の半数以上が2度のワクチン接種を完了した6月中旬までには、国民はマスクの着用をやめ、店舗やレストラン、ホテル、映画館が完全に営業を再開するなど、パンデミック以前の生活に戻った。
それ以降、従来株より感染力の強いデルタ株の拡大により、1日あたりの感染者数は着実に増加。13日にはこの4カ月で最高水準となる、754人の感染が確認された。ただ当局は、入院患者数を含む重傷者数は比較的少ないとしている。
それでも、こうした感染者の急増を受け、ナフタリ・ベネット新首相の政権は規制緩和の一部を見直すこととなった。
「軽い抑制」と呼ばれるこのアプローチを通して、イスラエル国民は新型ウイルス感染症COVID-19との共存方法を学ぶことになる。
屋内でのフェイスマスク着用の義務化や、イスラエルに入国する全員を対象とした隔離措置など、感染対策が再び導入された。
オランダ
ワクチン接種が進み、感染者数が減少したオランダでは、6月下旬に社会活動の再開を押し進めた。ほぼすべての場所でフェイスマスク着用義務が廃止され、若者たちは再び外出できるようになった。
するとその後、感染者は急増し、昨年12月以来の高水準となった。ただ、入院患者の著しい増加にはつながらなかった。
保健当局からの批判が強まる中、マルク・ルッテ首相は9日、困った状況に追い込まれた。解除からわずか3週間で多くの制限が再導入されることとなった。
レストランやバーは深夜0時以降の営業ができなくなり、ナイトクラブは再び閉鎖された。
ルッテ首相は12日、制限措置の解除が時期尚早だったとして、「判断を誤った」と謝罪。「可能だと思っていたことが、実際には不可能だった」と認めた。
オランダ政府のウェブサイトによると、この措置は少なくとも8月13日まで実施される。
韓国
韓国はCOVID-19への対応で成功を収めた国として称賛されており、東アジアで最初にパンデミックからの脱却を図った国の1つだ。
6月には、予防接種を受けた人について、屋外でのマスク着用を認めた。また、小規模な個人的な集会が許可され、レストランの営業時間が緩和された。
しかし専門家は、韓国国民の大半がまだワクチンを接種していないと指摘。新型ウイルスに対する警戒を解くのが早過ぎたと警告した。
今では過去最悪レベルの感染流行に直面している。
1日の新規感染者数が過去最多を更新し、政府は国の大半で社会的距離を確保するルールを強化せざるを得なくなっている。首都ソウルでは、午後6時以降に複数で集ることが禁止されている。
デルタ株の感染が急速に拡大する一方で、ワクチン接種率は低下している。国に新型ウイルスに対処する能力があるのか、国民の信頼は大きく損なわれている。
スウェーデン
ほとんどの国と異なり、スウェーデンは独自路線を歩んでいるが、それでも、レストランの営業時間の短縮や施設の混雑緩和のための制限を実施した。
制限の一部はすでに緩和されており、7月1日には3000人を上限に有観客でのスポーツイベントの実施が可能となった。店舗の営業時間の制限も廃止された。15日からはさらに多くの制限が廃止となる。
今春以降、感染者数は急激に減少している。ワクチン接種者が増えたことや、暖かい季節になり屋外で過ごす時間が増えたためだ。
しかし、デルタ株の拡大への懸念から、スウェーデンに入国する人のほとんどはウイルス検査を受ける必要がある。
オーストラリア
オーストラリアの人たちは昨年1年間のほとんどの期間、ほぼ制限のない生活を楽しんでいた。新規感染者が全く確認されない日が続き、フェイスマスクを着ける必要はなかった。
感染の流行が確認された場合には、当局は感染をゼロに抑え込むため瞬時にロックダウンを敷いた。1月にパースで1人の感染者が出た際には、5日間の封鎖措置がとられた。
しかし、6月中旬にシドニーでデルタ株の感染流行が確認されたことで、同国最大の都市は再びロックダウンに突入した。この措置は少なくとも7月末まで続く見込み。
現在、シドニーは1日の感染者100人以上という事態と闘っている。市民は制限措置に不慣れなことから、都市封鎖の最初の数週間だけで感染が拡大した。当局は市民が自宅待機のルールを悪用したとしており、行動制限はその後、強化された。
国民の90%以上がワクチンを接種していないため、通常の生活に戻るには時間がかかると当局はみている。米ファイザー製を中心としたワクチンの供給不足により、多くの国民は年末近くまで接種を受けられない可能性がある。
アメリカ
ジョー・バイデン政権がワクチン接種を推し進める中、多くの州がマスク着用義務を廃止し、企業の営業再開を許可するなど、制限を解除し始めている。
アメリカで最も人口の多いカリフォルニア州は6月、社会活動の「華々しい再オープン」を発表した。一方、接種率が70%を超えたニューヨーク州はほぼすべての制限を解除した。
国全体としては、感染者数は少ない状態が続いている。この2週間で新規感染者は倍増しているものの、流行のピーク時だった1月の1日あたりの平均感染者数の10分の1以下にとどまっている。
しかし、ワクチン接種が進まない州では、従来株より感染力の強いデルタ株の感染が急増しており、懸念が高まっている。ワクチン接種率が低いことを理由に、一部の州は住民にマスクの着用を推奨している。
ニューヨーク市ではこの1週間で、感染者数が約3割急増した。ワクチン接種率の低い地区での感染者急増が目立っている。
死者数もじわじわと増えつつあるが、感染者数ほどの増加幅ではない。州当局は、現在入院しているCOVID-19患者の圧倒的大多数がワクチンを接種していなかったとしている。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-57845609

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