2021/07/25【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナ巡る英国の「賭け」が世界の脅威になる理由 /イギリス
イングランドでは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための行動規制がほぼ撤廃された。英国は危険な、多くの命が奪われることにもなりかねない「実験」を開始したのだ。
英国でワクチン接種を完了したのは、人口の半分をわずかに上回るだけの54%、1回目の接種を受けた人は約70%だ(7月21日時点)。これらの数値が行動制限措置を解除するのに十分だと判断したことは、悲劇的な誤りだといえる。
同国はワクチン接種率が約58%のイスラエルに比べ、はるかに脆弱な状態にある。現時点では最も有効性が高いとみられる「mRNAワクチン」(米ファイザー製)を使用しているイスラエルとは異なり、英国で接種されているのは、自国のオックスフォード大学とアストラゼネカ社が共同開発したワクチンだ。
感染力が強まった変異株の「デルタ株」に対するアストラゼネカ製ワクチンの有効性は、ファイザー製や同じmRNAワクチンのモデルナ製よりも低く、発症を予防する効果は60%程度とされている。
行動規制がほぼすべて解除されたイングランドの「フリーダムデー(自由の日)」は、英国内の各地でこれから感染する人、そして後遺症に苦しむ、あるいは命を落とすことになる人たちにとっての悲劇だ。
だが、これは同時に、世界にとっての悲劇でもある──イングランドでは、ワクチンが効かない新たな変異株が出現するための理想的な環境が整えられたことになるからだ。
■感染者の増加が変異株を生む
ワクチンは感染を確実に防ぐバリアというよりも、警報装置のような役割を果たすものだ。それを忘れてはならない。ワクチンは私たちの体に、新型コロナウイルスを速やかに認識し、免疫応答を働かせ、ウイルスを排除するための方法を教える。
だが、新型コロナウイルスはすでに、この警報装置のスイッチの一部を切る方法を学んでいる。つまり、このウイルスには、私たちの体内でより多くの複製を作り出すための時間がより長く与えられるようになっている。
ワクチンだけに頼れるのか?
体内で作られたウイルスの「コピー」は、またそれぞれに複製を繰り返し、その過程で何かを間違う。そのエラーが、新たな変異株になる。変異したウイルスは、ワクチン、または過去の感染によって獲得された免疫に勝る力を持つようになっているかもしれない。ワクチンが効かない変異株が生まれる可能性があるということだ。
■ワクチン以外の対策も重要
こうした中で良いニュースといえるのは、私たちが完全に無力ではないということだ。適切な手段を講じれば、私たちは新型コロナウイルスを封じ込め、ある程度は「元通りの通常」の生活と、経済活動を取り戻すことができるはずだ。
今のところ、ウイルスに対する私たちの防御の第1線は、ワクチンだ。だが、オーストラリアや中国、ニュージーランド、シンガポール、そして台湾などの各国・地域がこれまでに行ってきた対策の結果から示されているように、広範な検査と徹底的な接触者追跡、自主隔離の義務化は、確実な「第2の防衛ライン」となる。
こうした措置によって各国・地域の感染者数の増加を抑え、さらに国境での検疫を強化すれば、全体としての感染者数を抑制することにつながるだろう。また新たに感染が拡大し始めても、マスクの着用、ソーシャルディタンスの確保、都市封鎖といった措置を講じることで、感染地域の拡大を、素早く抑え込むことができるはずだ。
だが、残念ながら英国、そして米国はどちらも、効果的な第2の、そして第3の防衛ラインを張ることができなかった。両国では今後、ほぼワクチン以外に頼るものがない状況が続くことになる。
https://news.yahoo.co.jp/…/a4d8b6429e51bafb28cdc9fc9c9c…