2021/07/30【新型コロナウイルス:COVID-19】コロナ感染爆発、インドネシアの1日の死者数が世界最多に、何が起きている? /インドネシア

7月下旬の時点で新型コロナの新規感染者数が1日に5万人前後のペースで増え、今や感染拡大の新たな震源地になったインドネシア。7月27日には1日の死者が2000人を超え、世界最多になってしまった。
世界第4位の人口を抱えるインドネシアは、政府も国民もこの第2波への対応に苦慮している。優先順位の対立、ワクチン供給の遅れ、都市封鎖、その他様々な問題が、危機的状況を作り出している。専門家は、今後状況はさらに悪化するだろうと警戒する。
7月下旬、政府によるワクチン接種推進計画の一環として1万回分の新型コロナワクチンが提供されることになり、首都ジャカルタにあるプロ・ゲバン・メイン・バスターミナルで、数千人の接種希望者が長蛇の列を作った。
一方、町の反対側では、新型コロナウイルス感染症で亡くなった犠牲者の墓地に人々が列をなした。遺族が花を手向け、最後の別れを告げているすぐそばで、ショベルカーが新たな墓を掘っていた。
3月に開園したばかりの公営墓地は、当初7200人分の遺体を受け入れられるよう設計されていたが、感染拡大に伴う死者数の増加に対応するため、町は新たに10万平方メートルを追加しようと計画している。
変異したデルタ株が猛威を振るうなか、報告されている感染者数は実際の数を大きく下回っているとする見方が多い。検査の陽性率は27%を超えており、検査を受けず、陽性であることに気付かないで生活している感染者もかなりの数に上るであろうことを示している。
医療は全国的に逼迫している。先週にはジャワ島で病床と酸素が足りなくなり、今週にはバリ島でも同様の事態に陥った。ジャカルタの病院では、病床使用率が73%にまで上昇した。7月前半だけで114人の医師が新型コロナに感染して死亡し、パンデミックが始まって以来1500人の医療従事者が命を落としている。
現在、同国の新型コロナと診断された例の致死率は2.7%だが、この先医療インフラが整っていない地方へも感染が拡大すれば、その数字は上昇するとみられている。
国民が正しい情報を受け取っていない
インドネシアの人口およそ2億7000万人のうち、7月下旬までにワクチンの接種を済ませたのはわずか6%にとどまっていた。政府の強い働きかけで新たに約87万4000回分のワクチンが接種され、8月からは1日200万回分を接種することを目標としている。とはいえ、国産ワクチンがないインドネシアは、国外からの供給に頼るしかない。
ワクチンの供給開始が遅れたことに加え、最も弱い立場に置かれている国民の多くは、いまだに検査を受けることもままならない。症状が出ている人や濃厚接触者は無料で検査を受けられるが、そうでない場合、PCR検査は日本円で6500円以上かかる。1カ月の賃金が2万2000円以下という平均的な労働者には、簡単に出せる金額ではない。陽性と判定されれば、仕事にも影響が出て、経済的苦境に立たされるという不安がある。
政府の発表では、7月28日までの新型コロナによる死者数は8万8659人となっているが、国内のコロナ情報の収集と共有を行う共同体「ラポール・コビッド」の共同創立者イルマ・ヒダヤナ氏は、実際の数はそれよりもはるかに多いはずだと考えている。150人のボランティアとともに180の町と34の州からデータを集めているヒダヤナ氏は、州や地方自治体レベルで報告されている死者数と照らし合わせると中央政府の数字はかなり低く、2万人以上の死が「消えている」と話す。
「国民が正しい情報を受け取っていないことが、感染急拡大の原因です。ウイルスがどのように広がるのか、それがどれだけ危険なものなのかを理解していないので、公衆衛生対策に従おうとしないのです」
貧困層が拡大
パンデミックが始まって以来、インドネシアでは112万人以上が貧困に陥った。人々は、感染の危険を冒しながら長時間労働を強いられている。また、200万人以上が、人口が密集する都市部を離れて、地方で農業労働者として働いている。
「失業率は6%から7%に増えただけで、急激な落ち込みはありません。けれど、人々は生産性の高い仕事から低い仕事に移行しています」と、インドネシア大学の経済学者ファイサル・バスリ氏は指摘する。
国連が発表した最近の報告によると、過去1年間で食料不足を経験した家庭は、インドネシア全体の31%に上っていた。パンデミックが始まる前でさえ、国内では700万人の子どもが栄養不足のため成長に遅れが出ていたという。
「パンデミックが終わってみたら、おそらく失われた世代ができてしまうでしょう。このような状況にある子どもたちは、質の良い食べ物を十分に取ることができません」。非営利団体「フードバンク・オブ・インドネシア」の創立者ヘンドロ・ウトモ氏は言う。
同団体は国内各地で食べ物に困っている人々に食料支援を行っているが、最近の感染拡大により、食料の寄付を集めることに困難を覚えているという。ボランティアの感染予防対策もままならず、過去1カ月だけで4人のチームメンバーが新型コロナに感染して死亡した。
改革を推し進める機会に
東南アジア最大の経済を誇るインドネシアは、コロナ禍でも2020年のGDPは2.1%縮小しただけだった(米国のGDPは、同じ時期に3.5%縮小している)。
経済学者のバスリ氏によると、インドネシアの上位10%を占める富裕層は、パンデミックの間に富をさらに拡大させたという。観光産業が落ち込んだバリ島の富裕層だけが、経済的打撃を受けていた。
政府はこれまで、武漢やイタリア北部のように厳しい都市封鎖には消極的だった。影響を受ける人々を支援する財政的な余裕がないためだと、バスリ氏は指摘する。ところが同じ時期、新車を購入するときの奢侈税を一時的に免除した。「このように、富裕層に有利な政策がとられています」
一方、その他のコロナ対策が、持てる者と持たざる者との格差を決定づけてしまうかもしれない。貧しい労働者家庭の子どもたちが、リモート学習で十分な支援を受けていないという現状だ。それが、なし崩し的に子どもたちの将来に長期的な不利益を与えることになりかねないと、ニュージーランド、ワイカト大学の経済学者スーザン・オリビア氏は指摘する。
医療が逼迫すれば、新型コロナ以外の疾患にかかっても病院に行きたがらない人が出てくる。必要な時期に必要なコロナ以外のワクチンや定期検診を受けない子どもも増えるだろう。若いうちのストレスや食料不足は、長期的な健康にも影響を与える。
「政府はこの危機を、改革を推し進める機会ととらえるべきです」と、オリビア氏は言う。
https://news.yahoo.co.jp/…/09d25d80dc61379c6b12266e371f…

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