2020/05/12【新型コロナウイルス:COVID-19】SARSとMERS消毒に有効な革新的酸化剤MA-T、新型コロナにも有効と実証-阪大ほか
ウイルス存在時にのみ必要量の消毒成分を水中で生成する、安全で安定なMA-T
大阪大学は5月8日、要時生成型二酸化塩素水溶液(MA-T(R))が新型コロナウイルスに対しても1分間の接触試験で有効に消毒できることを確認したと発表した。
MA-Tは、株式会社エースネットが17年の歳月をかけて開発した除菌・消臭剤のシステム。ANA、JAL、PEACHなど日本のほぼ全ての航空機で採用され、多くのホテルでも利用されているほか、羽田国際線ターミナルの100か所以上のトイレでは除菌・消臭を目的に噴霧も行われている。
2015年にMA-Tを用いた創薬に関する相談が大阪大学先導的学際研究機構創薬サイエンス部門にあり、研究を開始。欧米の飲料水にも含まれている亜塩素酸イオンを主成分とするMA-Tが、反応すべき菌やウイルスが存在する時にのみ、必要な量だけ二酸化塩素の成分を水の中で生成する「要時生成型二酸化塩素水溶液」であることを明らかとし、その安全性や安定性の秘密を化学的に解き明かした。さらにはその化学的性質を活用して、21世紀のドリーム反応と考えられてきたメタンの酸化反応の発見にも至っている。
これらを受け、2019年度から国の産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム「OPERA」に採択され、複数の企業と連携してMA-Tのさらなる応用化に向けた基礎研究が追究されるとともに、同大微生物病研究所や医学部附属病院とも連携して、MA-Tを用いた安全かつ有効な空間除菌のためのプロトコルの開発について基礎研究が進められている。5年後には海外で院内感染を制御する臨床試験も計画されている。なお、大阪大学オープンイノベーション機構も同時に設立され、同機構の中でもMA-Tの応用化に関する事業化が検討されている。
1分接触で新型コロナを98%以上消毒する「MA-T」、医療崩壊を防ぐ手立てに
2020年5月7日時点のWHOの日報によると、世界の新型コロナウイルス感染者は367万人を数え、25.4万人を死に至らしめている。日本でも、最初の感染者の報告があってからわずか3か月間で患者数1万5,000人、死者551人を数え、猛威を振るっている。これに対して、同大微生物病研究所の松浦善治教授らは、MA-Tが0.01%含まれた水溶液が、2002年、2012年にそれぞれ流行したSARSコロナウイルスおよびMERSコロナウイルスを1分以内に消毒できることを明らかとしたほか、新型コロナウイルスに対しても有効であり、98%以上消毒できることを実証した。詳細な実験データについては今後の検証によって明らかとされる予定だという。
MA-Tは、5年後には海外で院内感染を制御する臨床試験も計画されているが、現在、研究グループは、これを前倒しして、院内感染を防ぐ取り組みにできないかと模索している。感染拡大防止に配慮した医療体制構築に向けて噴霧器の設置も提案している。また、医療現場における二次感染を防ぎ、マスクや防護服に対しても消毒してすぐに使うことのできる液剤として役立てることで、医療崩壊を防ぐ手立てとしたいと考えているという。
さらに、現在、医療従事者の子どもたちに制限して保育している学内保育園に対しても、MA-Tを導入して大切な子どもたちと保育士らを感染から守る試みが開始されている。同大は、「医学部附属病院と歯学部附属病院で働く若い医療関係者の子どもたちを新型コロナウイルスから守る活動を通じ、若い医師や看護師らが最先端の医療技術を必要として全国から集まってくる患者やその家族と一緒に全力で病気と闘うことのできる体制を整備している」と、コメントしている。
http://www.qlifepro.com/news/20200512/ma-t.html