2020/05/12【新型コロナウイルス:COVID-19】コロナ感染労災 従事者の補償を確実に
新型コロナウイルスに感染したら労災補償は受けられるのか―。
医療や介護などの現場から、業務が原因で感染した場合、速やかに労務災害を認定するよう求める声が高まっている。
感染リスクと隣り合わせで働く人たちの不安が募れば、離職を招きかねない。必要な補償が迅速に行き届く一層の環境づくりを急がなくてはならない。
勤務医らの労働組合「全国医師ユニオン」は4月末、感染拡大を受け、オンラインによる労災相談とともに、勤務実態の緊急アンケートをネット上で始めた。
感染の拡大や院内感染により医療従事者に不安が広がっていると指摘。感染しても業務との因果関係が断定できず労災が認められない事例もあるとして、「感染時の補償がなければ医療崩壊が進みかねない」と訴えてきた。
企業などで働く人の傷病が業務に起因すると認定されれば、労災保険法により治療費が支給され、一定の休業補償も得られる。
厚生労働省は他の傷病に準じた扱いだった新型コロナに関する労災認定に新たな基準を設けた。
4月28日、各労働局に対し、医療や介護の従事者らについて「業務外での感染が明らかな場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる」と通達を出した。
医療や介護現場は勤務先の協力が不可欠だが、懸念材料がある。
過労死弁護団全国連絡会議は先週末、全国一斉の電話相談を行った。看護師から「院内感染しても労災の話は病院から何もない」、感染症病棟で従事して感染したが「補償などの説明が全くない」といった声が寄せられた。
通達は医療・介護従事者以外でも感染源が業務内と明らかに認められる場合は給付対象とした。
これも労災問題に携わる専門家らから問題点が指摘されている。感染経路が特定できない場合だ。スーパーのレジ担当者、タクシーやバスの運転手、育児サービス従事者などが想定される。
潜伏期の業務や生活状況、医学専門家の意見などを基に労基署がそれぞれ判断する。あらゆる角度から調べるため、判断まで相当な時間がかかってしまう。
審査の煩雑さ、勤務先の認識不足や非協力などで当事者が放置されてはならない。厚労省は認定要件をさらに緩和し、迅速な審査が進むよう対応すべきだ。
各地域で従事者たちが相談できる態勢も必要だ。生活インフラを担っている人々の意欲を支える安全網を確かなものとしたい。
https://www.shinmai.co.jp/…/KT200511ETI090007000.php